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ドイツと日本
  −両国の歴史的な責任


エーベンハウゼン研究所主任研究員
マルクス・ティッテン


I. 国益を背景とする自国の役割理解
II. 「ドイツとEU」対「日本とアジア」
III. 二国間協調の可能性と限界

国益を背景とする自国の役割理解

 東西冷戦期においては、第二次世界大戦の敗戦国であるドイツと日本の置かれた状況を比較する試みは一般的であり、ある程度正当性を持ったものとして認められていた。しかし冷戦終結後の現在、こうした比較を行うことの妥当性がもはや認められないほどに、両国を取り巻く情況は異なったものとなっている。ドイツの分断は、「冷戦」という名の下に半世紀にわたって続いてきた一つの状態を規定する要素であり、同時にその目に見える象徴でもあったのだ。

 当時、世界を取り巻く情況は、今日の視点からはほとんどノスタルジックと言えるほど単純明快で安定した形で秩序づけられていた。東西緊張が醸し出す安定は、ある物理的な論理に基づいていた。つまり、東西両極の勢力が拮抗していたことによって力の均衡が保たれており、それによって東西各ブロックの諸国に秩序とバランスが与えられていたのである。これらの諸国が、実は内部で様々に異なる考え方を培い、育んでいたことは、すっかりその陰に隠れてしまっていたのだった。私たちの西側陣営を例に取ってみれば、たとえばNATOに対するドイツとフランスの全く異なるスタンスなどが例としてあげられるだろう。
 また、日本を例に取ってみると、日米安保条約の更新が、日本国内において、また太平洋地域全体において引き起こした、様々な騒動を思い出しておくこととしよう。何れの場合も、私たちが「自由な西側諸国」と呼びならわしている枠組みというひとつの「縛り」の前に国益を最終的に服従させている事態は効果を持っていたのであり、この点では、攻撃的で、しばしば軍事力をもってすら貫かれていたソビエト帝国の東欧地域における単独支配と変わりはなかったのである。

この東西それぞれの「釜」の中で各国毎、地域毎、民族毎、文化毎の様々なグループに

 

 

 

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