し、さらにソ連の崩壊により差し迫った脅威が無くなったこともあって、孤立主義とユニラテラリズム(Unilateralism)の傾向が、アメリカ内部で高まっていることも事実である。非核大国である日本とドイツは、アメリカが国際社会の安定のために指導的・建設的役割を今後も果たし続けることに、特別の利益を持っており、またそのために必要な負担を負う能力を、先進民主主義国の中で、もっとも多く持っている。
第二に非核大国として、国際社会の安定に、協力して積極的役割を果たすことである。この点で、軍備管理・軍縮の促進、大量破壊兵器の拡散防止、国連の平和維持(Peace-keeping)・平和創造(Peace-making)機能の強化、未処理地雷の処理と対人地雷の廃絶等について、両国の協力の強化が望まれる、このためにも、第二次大戦の主要戦勝国であり、かつ核保有国でもある国々のみによって構成されている国連安全保障理事会の常任理事国に、日独両国が加わることは、重要である。それはまた同理事会の構成を国際社会の実情をより正確に反映し、国際平和の維持・強化により実効性のあるものに改善するという課題に沿うものでもある。また冷戦終結後、国際社会の安定のために、環境・資源・難民問題等の非軍事的課題の解決が重要さを増しており、この意味でも世界有数の経済力と技術力を持ちながら非軍事大国である日独両国の果たすべき役割は大きくなっているのである。
第三に、これまで交流が比較的乏しかった東アジアと西ヨーロッパとの結び付きの強化に、それぞれの地域の大国として、両国が協力して貢献することである。この点で、アジア欧州会合(Asia-Europe Leaders’Meeting,ASEM)を強化し、またEUとAPECの関係の緊密化をはかることが、特に重要であろう。これに関連して、日本がヨーロッパの平和と繁栄に、そしてドイツが東アジアの平和と繁栄に、それぞれより深い関心を持ち、より大きな役割を果たすことが求められている。たとえば日本は、ボスニア・ヘルツェゴビナの安定化と復興とにより積極的になるべきであるし、ドイツは朝鮮半島の平和のために、KEDOその他でより大きな役割を果たすべきであろう。またロシアが民主化の下で政治的に安定し市場経済を基礎とした発展を実現すること、そして中国が国際社会の建設的な一員として引続き発展を遂げることは、世界の平和と繁栄に重要な意味を持っており、それぞれロシアと中国とに近接している日独両国にとってとりわけ切実な共通の関心事なのである。
第四は、先進民主主義国が共通して直面している課題の解決に向かっての両国の協力である、それらの課題としては、高齢化・少子化の進行のなかで、いかにして社会の活力を保持し、また社会保障制度を維持するか、技術革新と経済活動の国際化と国際競争の激化とによって生じている失業問題や貧富の差の拡大等の経済的困難をいかに克服するか、社会の豊富化にともない、これまで社会秩序維持に重要な役割を果たしてきた家族・地域社会・宗教団体・職能団体等の社会的凝集力と秩序維持能力(最近の用語を使えば、Social Capital)が弱まっているなかで、いかにして社会秩序を維持するか、中間的社会集団の凝集力減衰、マス・メディア(とくに映像メディア)の発達等により、政党の組織力が弱まり、有権者の投票行動が不安定化し、人々の関心が断片化している中で、いかに民主主義