自己理解の観点(平和と自由に自己展開・実現できる物質的・精神的基盤の創造・維持)が含まれる、しかし、国益の対外的要素がさらに重要である。
独日両国は特定の多国間枠組みに組み込まれている、ドイツはNATO,EUの加盟国であることにより、政治的・経済的に生き残る能力を確保している。一方、日本は日米安全保障条約により、安全と防衛力を保障している。
「ドイツとEU」対「日本とアジア」との観点からみると、ドイツと日本がそれぞれの地域において果たす役割を理解するには、(1)国家としての自己理解と、(2)その国に対し期待されているもの、の二つを理解することが重要である。
自由で民主的な基本秩序の下で国民に豊かな暮らしをさせたいとのドイツの国益を守り、発展させることは、単にドイツ国としての課題にとどまらない。
ドイツは外交上の第一目標を、ヨーロッパ統一の実現においている。統合のプロセスが進むにつれて、国民国家としてのコンセプトは意味を失ってゆくが、そのようなドイツが日本に対して古典的な国民国家という意味の主権国家としてどこまで振る舞い得るかは問題である。
ドイツの場合、ドイツが政治的指導的役割を求めるかの疑問を呼び起こしかねない外交手段に対しては控えめな態度をとることが相応しい。日本の場合は、周囲の近隣諸国における民主主義概念や民主的秩序原則を促進し、根付かせる政治的責任を負うと考えてよいであろう。ドイツの政治的責任は、周辺各国のなかで、国としての主権をある程度犠牲にしてでも控えめな態度をとり、ヨーロッパ統合における模範的統合推進役を演ずることに尽きる。それに対し、日本の役割は、自らのモデルを周辺諸国の繁栄のために宣伝することにある。日本の政治的基本方向がその他の国々にとっての模範としてより広く認められるように、国民国家としてのコンセプトを掲げ、独立国家としての主権を意識的に守り強化することが不可欠の前提条件である。
日本とドイツの二国間協調の可能性と限界について、独日両国のおかれている基本的条件は異なっているが、両国政府は明らかに両国の協調とパートナーシップが必要になっているとの見解を持っている。
独日外相による「独日パートナーシップのためのアジェンダ」では、(1)国際世界の平和と安定のための貢献、(2)世界経済システム強化のための貢献、(3)国際世界の繁栄促進のための貢献、(4)アジアとヨーロッパの関係促進のための貢献、の4つの領域を協調すべき点として挙げている。
地球的規模のテーマでは、国連改革、軍備管理、大量破壊兵器の不拡散、核エネルギー