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近は、「愛国主義(ナショナリズム)」に統合機能の代行が期待されている。しかし、愛国主義は少数民族と台湾・香港のサブ・ナショナリズムを刺激して統合よりむしろ分裂・独立の機能を助長しかねない。

 新しい時代のキーワード探しと実行を任せられる新指導体制作りが中国の問題である。次の時代を形成する新しい枠組み作りは第15回党大会で選ばれる第4世代の指導者に課せられた課題になる。



 第三セッションでドイツ側からは、カイ・シェルホルン・ヘルベルト・クアント財団理事が、「ドイツによるロシアの現状認識と将来への展望」のタイトルのもとで、報告を行った。ドイツ側からはロシアの民主化と将来展望に対する見方が披露され、次のような議論が行われた。

 ロシアの民主化について、ロシアは現在、社会・政治においてロシア史からみてもパラダイム転換的な変化のただ中にある。ゴルバチョフ大統領がペレストロイカとグラスノスチ政策によってソ連に革命的変化を起こし、ドイツの統一と東西対決の終結を可能にした。ソ連の崩壊後、ロシアは民主主義と市場経済に向けて出発した。目標は明らかであったが、そこに到る途を明確に示す教科書はなかった。93年12月の新憲法に基づく第1回の自由選挙を経て、ロシアは速やかに民主主義国家に生まれ変わるかにみえたが、ガイダル首相の経済改革路線にブレーキがかけられたことで、権威主義的な方向へ大統領機関の権力が増大した。
 94年にロシアは、国家的見地から統一を維持するためにチェチェンにおける冒険的な戦争へと突入した。自国内の戦争と基本的人権の無視により、ロシアの民主化は後退した。95年12月に、エリツィン大統領が公約どおりに第2回目の選挙を行ったことで、憲法と公約を守ろうとしていることがわかった。
 95年の国会選挙では、共産党が最大の勢力になったが、96年の大統領選挙では歴史的な敗北を喫した、現在、ロシアの民主主義的発展は再び安定したように見受けられる。
 エリツィン大統領の病気のために、ロシアの将来に大きな疑問符が付いている。ロシア自身が「病める患者」であり、その回復には決断力ある、職務を遂行できる大統領が必要である。ロシアは現在、経済界の大物によって管理され、統治は行われておらず、改革のプロセスは凍結状態にある、内政・経済政策の明確な決定が焦眉の急となっている。現在

 

 

 

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