日本財団 図書館


 

できるのではないか。

 WTOにはGATTにない21世紀の貿易ルールとしての長所がある。紛争処理メカニズムの強化と活用が進み、排他的地域主義、二国間主義への歯止めとして有効である。また、サービス・投資など新分野を取り扱っていることも意義がある。日独両国はWTOのプロセスを支援すべきである。

 1980年代後半以降、国境を越えた直接投資が飛躍的に拡大している。その背景には、EU統合の進展、アジア諸国の経済開放政策、旧東側諸国の市場経済化、為替レートの大調整の経験から直接投資が企業戦略として決定的に重要になったことがあげられる。
 財・サービス・資本などの動きに対する技術的・政策的障害の減少により、どの国で企業活動を行うかについて企業の選択の自由度が高まった。この結果、直接投資が貿易の流れを決める時代となり、直接投資の重要性が高まった。
 従って、貿易そのものより、国際的な経済ゲームのなかで直接投資を如何に位置づけるかが、重要な問題となっている。投資保護、投資誘致競争、投資紛争処理等について多国間投資協定の検討が進められているが、直接投資のメジャーファクターである日独両国はこの問題に対する認識を共通にすることが望ましい。

冷戦終焉は、南北問題を変質させた。冷戦終焉後、地域紛争が多発、難民が急増しているが、その根本的な原因は貧困とその結果としての絶望状態にある。一方、旧「東」諸国の多くが「南」へ転落した。東西対立の解消は公的援助(ODA)の削減をもたらした。また、市場経済の進展は、公的援助に代わり、より多くの世界の資源配分を市場を通じた民間の資本移動に委ねることになったが、アジアの大勃興とアフリカ等の貧困深刻化に示されるように、強さと弱さを拡大するという限界がある。本当に外国資本を必要としている国には、市場を通じては資本が向かわないため、貧困から脱し得ず、紛争が続くのである。トップレベルの援助国として日独の援助政策の戦略的な遂行と協調が一層求められる。

 その他の課題としては、以下のような点があげられる。

(1)世界経済の安定化成長促進のための協調

G7プロセスの再活性化

環境分野での協力、とりわけ環境技術の開発における共同

新エネルギー開発のための多国間協調

アジアと欧州の交流、相互依存強化(ASEMの活用、EUとAPECの相互理解の促進)

(2)日独二国間関係の強化

人的交流の拡大

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION