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操船負担を物理的に評価するため、変針量や変速量あるいは偏位量などの諸量を抽出し、検討を加えた結果、避航操船に伴う単位時間当たりの船首尾方向および正横方向偏位量(避航操船を行わない場合の船位との差)を採用することが適当との結論を得ている。
これらの検討の結果、交通環境を評価する指標は、
推定困難度=ax閉塞度+b×正横方向偏位+c×前後方向偏位+d…(6.2.2)
の多項式で表し、係数a〜dは操船者に対する評価実験データに基づいて求めることとした。図?−6−22および図1−6−23は重回帰分析の結果を提示するものであるが、避航空間閉塞度ならびに物理的操作量を用いた推定評価は、操船者の評価をよく説明している。
なお、この解析に用いたデータは、交通流シミュレーションから27種の航行状況を取り出し、およそ十数分間の船舶の流れを一枚の鳥敵図として、約22名の操船者に示し、着目船の周囲の交通環境について回答を求めたものである。評価値としての困難度は、極めて容易な状況が0、普通の状況が5、極めて困難な状況が10に対応する。(補完的な尺度としては、5〜6がやや困難、6〜8が困難、8〜9が非常に困難な状況に、それぞれ対応する。)

 

(5)他船の変針時期の不確実さのモデル化
以上に述べた評価手法において、見合い関係にある他船の針路および速力は既知であり、将来に渡っても保持されるとの前提にたって、衝突の危険等が計算評価される。現実には他船の針路・速力情報の取得過程において誤差が介入し、また特に、今回のように左側通航から右側通航への航法切替え時の交錯が評価対象である場合、他船の変針時期については一般海域に比して、より不確実であり、衝突の危険は広範囲の変針・変速操船に潜在するものと考えられる。
この場合、他船の動静の不確実さを見積ることが必要であるが、明示的な調査・研究結果が見当らないため、次のような仮定をおいて試算評価することとした。

 

・他船は現在の針路から、標準偏差(1σ)にして士10度の範囲で変針(あるいは誤差)の可能性がある。
・したがって衝突の危険は、他船の針路が±2σの範囲で変動するものとして計算するが、当該針路を採る場合の衝突危険は、正規確率に応じて重み付けし、評価する。

 

6.3 試算評価結果について

 

(1)推定困難度による比較評価
図?−6−24および図?−6−25には、来島航路東口付近における推定困難度の出現頻度比較図を掲載した。上図?−6−24は、当該評価対象海域を航過した各船舶毎の平均値を

 

 

 

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