4.3.4 来島海峡の通峡試験 練習船こじまにRTK−GPSを設置して、来島海峡を通峡し、潮流下の操縦運動を計測し、それから加速度を推定すると、この状態で船に作用している流体力を推定できる。その流体力から、その時の船の運動によって生じたと推定できる成分とその時の操作によって生じたと推定できる成分を差し引くと、残りは潮流の影響によって生じた成分と考えることができる。このような方法で潮流影響を求めることを目的として、強い潮流が存在する場合に来島海峡を通過し、その時の船の運動と操作状況の計測を試みた。 まず、RTK用の基準局は本四架橋公団の協力を戴いて、馬島上に建設中のタワー上に設置し、K−GPS用に用いる基準局は操縦性試験と同様に広島大学のビル屋上に設置した。 移動局の設置については、6自由度の運動全体の計測、分離を可能にするために、4局を図?−4−37のように配置した。 通峡前に本船の操縦性能に関する資料を得る目的で、新針路試験と平行移動操舵試験を実施した。また、船体運動全般の計測へのRTKの利用の可能性を確かめるために、ローリングを引き起こすように左右の操舵を繰り返すという操舵試験を実施したが、本船の場合には操舵による横揺れはわずかで、この類の試験は波浪中等で横揺れしている際に行う必要があることが分かった。この新針路試験、平行移動操舵試験等の結果は先に紹介した操縦性試験結果とともに、今後まとめて扱う。 図?−4−38は船の来島海峡における時々刻々の軌跡、速度ベクトル、それぞれの位置の潮流の速度ベクトルを示す。潮流はこじまに備えられているドップラー・ログと電磁ログより求めた値である。図?−4−39には通峡時の操作と各運動、力、モーメントのタイムヒストリーを示す。前節と同様に船の船首尾方向、横方向の加速度、旋回の角加速度を求め、船にかかるトータルな力と旋回モーメントを求めた。これらから船体運動による成分、操舵による成分を差し引くと潮流影響が求まるのであるが、この部分の解析は、次年度の課題としたい。 終わりに 年度の途中から開始したこともあり、また経験のない分野であるために、解析途上にあり、結論の部分は来年度の報告に期待せざるを得ない。しかし、キネマティックDGPSは担当者の予想を超えた船位と船体運動の計測結果を与えるようで、具体的な運航環境の下での実船の性能の把握に、あるいは運動の制御に活用できることが確認された。 本研究の遂行に際して、GPS機材の提供をいただいたドリンブルジャパン社、また練習船こじまを用いた諸計測の便宜を与えていただいた海上保安大学校の各位に深くお礼申し上げたい。
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