用可能であることが分かった。ただし、アンテナの位置と船の向き等の関係により、距離が近くても電波が途切れることがあり、アンテナの設置位置には十分配慮の必要があることがわかった。 この計測の場合には、船の位置を、調査対象としているGPSの精度以上で測る方法がないところから、個々のGPS測位結果の直接の検定は難しいので、船上に固定した移動局間の距離から水平位置精度の確認をする、あるいは船上の移動局間の方位と既存のジャイロ測位結果との比較を行う等で、精度の確認を行った。 まず、船首尾に設置した局間の距離の計測値を図?−4−29に示す。この図にはRTK方式とK−GPS方式の結果が比較して示されている。いずれの方式の場合にも数cmの精度で計測が可能になっていることがわかり、実用上、幅広い用途が期待できる結果であった。 両方式を比較すると、RTKの方がよい推定結果を与えている。オフラインで後に解析すると、過去における未来のデータを用いて解析可能になるから原理的にはK−GPS方式の方が精度が向上する可能性があって良いはずであるが、RTKと比べて蓄積するデータなどに制限を設けていれば、そのデータ量の差が効いてRTKの方が良いという結果もありうる。実際の船位認識の演算方法の細部までは知ることができないので、ここでは使用した機材(Trimb1eNavigation社製4000SSF)の範囲ではRTK方式の方が精度が良いと結論づけておくことにする。 図?−4−30K−GPS方式で計測した船首尾の位置から回頭角速度を求めた結果を、ジャイロによる測定値と比較した結果を示す。両者はよく一致しており、船首方位の計測にも利用可能であることが分かった。 GPSは3次元空間での位置を測定するものであり、水平位置だけでなく、高度も測ることができる。図?−4−31は船上で計測したアンテナの高度を、潮位と比較したものである。 この潮位データは呉港と広島港のデータから、中間地点を補間して推定したものである。また、この図の高度とは、ジオイド面を基準としたものである。図?−4−27からわかるように、出港直後は水路が狭く閉じた場所であることから、潮位を補間により正確に求めるのは難しく、GPSの高度計測値とは違いが見られるが、その後はよく合っている。キネマティック方式では垂直方向の位置も水平方向と同様に高精度で測ることが出来、この結果から判断すると、船上の移動局の位置いかんでは6自由度の運動全体の計測が可能となると言える。 図?−4−32に呉、広島間を航行中の練習船こじまの縦横方向の速度と回頭角速度、また船内LANを通じて情報入手した舵角、翼角の記録を示す。後の操縦性試験や来島海峡通峡試験では、これらの情報を使用することになる。 4.3.3 RTK−GPSを用いた船の操縦性試験計測 練習船こじまに、RTK−GPSを設置して、操縦性試験を実施し、本船の操縦特性の調査にRTK−GPSを利用する可能性を確かめるとともに、その結果から、操縦性能の把握、あるいは操縦流体力特性の同定を行う可能性を検討した。試験は広島県の能美島の東、宮島の南の海域で実施した。RTK用の基準局は付近の能美島の山上に設置し、K−GPS用の
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