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第2の方法は前述の制御則に基づいて実際の通過操船の様子を再現することである。ここで採用した制御は比較的に実現が容易なものであるから、ここで実現される程度には人間も操船できると考えて良かろう。
以下、得られた潮流影響の推定結果を図?−4−17〜図?−4−23に示す。図中の「広島大学の潮流データ」とあるのは、かつて広島大学で潮流の実測結果を参考にして作成した潮流分布の下での結果である。また、「水路部の潮流データ」とあるのは今回、水路部によって推定された潮流分布の最大強さの場合の下での結果である。中潮流と弱潮流とあるのは同様に今回、水路部で推定された潮流分布の内、中程度の場合、弱い時を表す。
図?−4−17(a)は船が南航する場合、前述の線形制御で自動誘導された場合の航跡を与える。図中にはそれぞれの場合の潮流の向きと強さを参考のために示すと共に、航行しようとした予定コースラインを破線で記入している。図?−4−17(b1)、図?−4−17(b2)はこの場合の船体運動と制御の様子を与える。舵角、予定コースラインからの偏位、船首方位(船首角)、および斜航角である。また、図1V−4−17(c1)は西水道を南航する時、理想的に船が予定コース上を直進した場合に、潮流によって船に作用する船首尾方向(X)、横方向の力(Y)と重心周りのモーメント(N)を示す。また、影響をわかりやすくするために、モーメントをキャンセルするために必要な舵角を与えている。同様に、図?−4−17(c2)は中水道を南航する場合の結果である。
図?−4−18は船が北航する場合の航跡である。(a)、(b)、(c)は上述と同様に、航跡、運動と制御のタイムヒストリー、直進中の船に作用する潮流力の結果である。
今回の水路部による潮流分布は強い場合、中程度の場合、弱い場合の3種類が求められている。この潮流の強さの影響を求めたものを、図?−4−19は南流で南航の場合、図?−4−20は南流で北航の場合、図?−4−21は北流で南航の場合、図?−4−22は北流で北航の場合である。
図?−4−23は航行すべき予定コースを左右に100mだけ移動した場合の航跡を与える。
この結果から、場所的に潮流が複雑に分布しているので、通過位置が予定と違う場合の潮流影響の違いの程度を判断できる。予定コースの違いによって潮流影響に差が小さければ、予定コースライン上の誘導のシミュレーション結果で航行状況の判断ができるが、大きければ通過位置によって潮流影響が如何に違うかを詳しく吟味する必要がある。ただし、今回の潮流分布は島に近い浅瀬の影響が必ずしも十分に反映しているとは言い難い面もあるから、この点には注意を要する。

 

 

 

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