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4.2 単独航行状態の特性

 

はじめに
来島海峡を通過する場合の最も重要な困難の一つは強く、場所的にも不均一な潮流の影響である。この強く、不均一な潮流影響については操船者の経験から色々と指摘されているけれども、その定量的な把握は現在に至るも不十分な段階にある。その理由の第1は潮流自体が複雑で、計測するにも難しいし、推定計算する場合にも細部までの再現は容易でないという事情にある。第2には潮流によって誘起される流体力計算法が完全ではないから、それぞれの船型に依る流体力特性を正確に推定できない段階にあり、それに加えて、潮流影響を正確に特定できるには遥かに至らないと言う現状がある。また、第3には、実際に潮流影響の正確な実測例が無いために、検証自体が困難という問題もある。潮流影響の検証は別の課題であるが、極めて困難と言える。
ここでは、来島海峡を通過する際に受ける潮流の影響を把握するために、現実に推定、あるいは計測されている潮流分布を与えて、最も簡単な潮流影響の計算法を用いた。こうして、順潮、逆潮のそれぞれで強さを変えて潮流影響のシミュレーションを実施したので、その結果を報告する。

 

4.2.1 シミュレーションの方法と条件

 

先ず、今回のシミュレーションで用いた方法と条件を要約して紹介する。
「操縦運動の数学モデル」
本研究の目的を考えると、色々な船型の船舶の通常の航行状態での操縦性能を適切に再現でき、それに潮流影響が加わった場合に操船の難易度が如何に変わるかが明確にできることが必要である。したがって、色々な性能を持つ多くの船型に対して操縦運動が巧く推定できるということから、MMGモデルと呼ぶ通常の操縦運動の数学モデルによる流体力の計算をべ一スにして、潮流による対水の速度、加速度を利用する形で潮流影響を考慮する簡略なモデルで影響の大枠を把握することにする。この場合、船首尾方向にある横方向の潮流成分の不均一の影響は対水での角速度、角加速度が存在すると考えて計算する。
「船型」
供試船型は肥大船型を用いることにし、国際共同研究に利用されたESSOOSA?を用いることにし、実船は大型タンカーであるが、今回は船長を123.6mとした。船幅は18.85m、喫水は7.73mである。
「潮流の条件」
詳しい潮流データがないことも、このようなシミュレーションの難しさの一つである。
以前に来島海峡における実測例をべースにして細部は推定で補う形で潮流分布を求めたことがあり、それを用いたシミュレーションは来島通峡時の模様をよく再現しているとパイロットから評価されたことがある。今回、先ず、この潮流を用いて操船シミュレーションを実施したが、その後、第?編で紹介されている水路部の方法で推定された潮流分布が与えられたので、両方を対象とした。後者の場合、来島海峡付近の相当に広い海域全体の潮

 

 

 

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