目標航路において、追越し目標点をD点とした場合の結果を示しているが、被追越し船、追越し船ともに目標航路からの変位が若干大きくなっている。この原因としては、目標航路の変針点付近において潮流の流向が北西方向に変化していることによる影響が考えられる。これに対して、追越し目標点をE点とした場合の図?−4−14を見ると、被追越し船、追越し船ともにさほど大きな変位を生じることなく目標航路に沿って航行することが可能となっている。 (ii)南流最強時に南航する場合 図?−4−15、図?−4−16には、南流最強時に中水道を南航中のShip2が同じく南航中のShip1を追い越す場合の2船の航跡を示している。図?−4−15は図?−4−6に示した目標航路において、追越し目標点をD点とした場合の結果を示しているが、変針時に両船ともに潮流の影響により、目標航路からそれて航行する結果となっている。また、図?−4−16に示した追越し目標点をE点とした場合にも潮流の流向変化に起因すると思われる航跡の変化が見られるが、航行上さほど大きな影響はないものと思われる。 4.1.5 今後の検討課題 以上に示した結果は追越し時の2船間の側方距離を100m、被追越し鉛および追越し船の船速をそれぞれ10ktおよび15ktとした場合のみについての結果であり、今後、異なる側方距離および船速の組み合わせについても検討を行う必要がある。また、被追越し船として500GT程度の船を想定して船長48mとして検討を行ったが、追越し船と被追越し船の船長比の組み合わせが違う場合には、船体に作用する相互干渉力の大きさも変化するため、異なる船長比の組み合わせについても検討を要する。さらに、コンテナ船等の場合には水線上の面積が大きくなるため、風による影響も無視できないものと思われるため、風外乱の影響も含めた検討も行う必要があるものと考えられる。 4.1.6 あとがき 本節では、来島海峡通航時の航行の安全性を評価するための指標を求めることを目的として、2船が近接して航行する時の各々の船の運動特性をシミュレーション計算によって検討を行った。その結果、設定した目標航路上の潮流の流速、流向の変化により、航行船舶の操縦運動は大きな影響を受け、本計算結果では追越し時の船が一時的に相互に近接して航行する場合が生じることがわかった。今後、上記に示した検討課題について、より現実の操船に沿った航行条件の下で追越し船および被追越し船の船長比の問題、追い越し時の側方距離の問題、船速比の問題等を総合的、系統的に検討し、航行の安全性評価のための指標を調べる予定である。 参考文献 [1]貴島勝郎、安川宏紀:狭水路中を航行する船の操縦性能、日本造船学会論文集、第156号(1984)
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