3.2 操船者の生理的反応による操船負担度の推定 3.2.1 評価の目的 船舶の運航は航行環境と操船者、そして船舶によって形作られることはよく言われていることである、操船者は船舶の性能に応じて、時々刻々の環境状況に対応した操縦を行う。 操船者が常に船舶の性能を最大限に活用し、環境に対応する最適な操縦を行うことが理想である。しかし、現実には操船者の能力は有限であり、限度以上の仕事を課せられる場合や人間の能力範囲以上の状況がある。人間の能力を有効に発揮できる環境を作り、常により理想的な運航、すなわち安全で効率的な運航形態を維持するために、まず操船者にかかる負担を軽減させる必要がある。そこで、操船者にかかる負担を調査し、その特性を把握しなければならない。人間の関わる行動には、通常次の評価手法が用いられる。 主観的評価法 客観的(行動評価、負担度評価)評価法 生理的評価法 これらの各種評価法については文献(1)に詳しく紹介され比較検討がなされている。 以下にその概略を述べる。 主観的評価法は直接従事した操船者の意見をアンケートなどの方法により入手し、これに基づいてシステムの評価を行なう方法である。評価したい項目を直接的に問いかける事が出来るので簡便な方法であり、しばしば行われる方法でもある。操船者が公平に、普遍的な意見を持つ限りこの評価法から得られる結果は大変有効である。しかし、故意で無くても評価の公平さと、普遍性を維持出来ないことがあり注意を要する評価方法でもある。 これを避けるためには、数多くの操船者の意見を求めること、アンケート表現は誤解を生じない適切な方法を採ること、限られた試行範囲を逸脱したアンケートをしないこと、試行内容・試行順序を十分検討する等の配慮が必要である。しかし、十分な配慮は必ずしも実行出来ない場合がある。そのときは次に述べるような、他の評価方法を併用することにより、主観的評価法が持つ弱点を補うことが妥当であろう。 客観的評価法はオペレータの行動、操作そして操作の結果として生じる船体の運動などを解析し、システム自体の性能を評価するものである。 船舶操縦における代表的な行動評価量には次のものがある。 操舵量と操舵回数 機関操作量と操作回数 進路変更量と変更回数 システム操作内容と操作回数 自船の針路、航跡、速度などの実現した運動内容 自船と他船、自船と地形など相対的な関係を示す代表量
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