?.潮流場の検討
1. 潮流シミュレーション
来島海峡においては、「順中逆西航法」に象徴されるように、潮流が船舶航行・操船に大きな影響を及ぼしている。 海上保安庁水路部では来島海峡潮流図を刊行し、広く航海者や海事関係者に利用されているところであるが、本調査では、海上保安庁水路部に依頼して、「調和定数を基本としたモデル」による潮流シミュレーションを行い、来島海峡全域の詳細な潮流場を新たに作成した。これは、潮流観測データを調和分解して得られる潮流調和定数をもとに潮流を推算したもので、その概要は以下のとおりである。 1.1 観測資料 海上保安庁水路部で刊行している来島海峡潮流図は、図?−1−1に示す「既存の観測点」のデータにより、春秋の平均大潮期の図として各時間毎に作成されている。これらのデータからは同海峡の詳細な流況を表現することは量的に困難であるが、各観測点のデータは潮流を予測する要素を所有している。 すなわち、観測データから調和分解されたものがその要素で、潮流調和定数と呼ばれている。これらの主なものにはM2分潮(主大陰半日周期)、S2分潮(主太陽半日周潮)、K1分潮(日月合成日周期)、O1分潮(主太陰目周潮)等がある。一つの分潮は周期的な流れの振巾と遅角(ある分潮を起こす仮想天体がその地の子午線上を経過してから、その分潮の流れの振巾が最強となるまでの時間を角度で表したもの)を持っている。 1.2 潮流調和定数の分布図の作成 1.1観測資料の項で述べた各観測点の潮流調和定数は各分潮毎の流れの振巾と遅角が北方・東方分速に分けられている。これらの値から一つの分潮の北方および東方分速値分布図(図?−1−2および図?−1−3)を作成する。 すなわち、定数値を各観測点上にプロットして、振巾と遅角の等値線を描く方法である。 1.3 データベースの作成(デジタル化) 1.2項で作成された分布図から詳細な流況を得るには、分布図上に格子を描き、格子ごとにその値を読み取る。すなわち、1格子には北方分速と東方分速の調和定数(流れの振巾および遅角)が求まる。来島海峡においては経度・緯度10秒(約300m)で読み取った。これらのデータをデジタル化(フロッピー入力)して、各格子に観測値が在るがごとく再現する。(図?−1−4データベースファイル)
前ページ 目次へ 次ページ
|
|