日本財団 図書館


?U章 学校スポーツ活動への体育科学的接近

 

プロジェクトのねらいとまとめ〔運動処方専門委員会〕

 

委員長加賀谷熈彦

 

運動処方専門委員会は、わが国のスポーツの発展を支えてきた学校スポーツの基礎となる中1高等学校の運動部の望ましいあり方を論じるための基礎的資料の収集を、運動生理学、体力学、心理学、社会学の各視点から求める作業を続けている。昨年度の第1報に続けて本年度の研究報告を各研究担当者が本誌に述べているが、そのあらましを委員長報告として以下に述べる。なお、研究の最終的まとめは、次年度の研究終了後に報告する。

運動生理学・体力学的研究

1 久野たち論文「中高運動部員の筋酸素動態に関する研究」

本報は、解糖系能が成人よりも低いという特徴を有する発育期の子どもを対象に、スプリント走中および回復期の筋の酸素動態の状態を、運動部への加入の有無との関係で調べたものである。その結果、スプリント走中に筋肉はかなりの低酸素状態を示すことと、この状態がより亢進しているほどスプリント走の成績がよい傾向があることが認められたという。
筋酸素動態の状態という生理学的視点から運動部活動の影響を見ようとする新しい研究である。最近の、子どもの酸化系能と解糖系能の発達についての論議との関連でも興味のもたれる研究である。今後の進展を期待したい。

2 平野と青木論文「強度を漸増させる立ち幅跳びを行ったときの下肢筋群の放電様態の変化」

本報では、強度を漸増させる立ち幅跳びを行った際の下肢筋の活動を分析してその活動の変化の特徴をとらえることと、同一被検者について立ち幅跳びの主要動作のひとつである足底屈動作時の筋活動の特徴を理解しようとするものであった。前者については、いずれの試行でも、前脛骨筋、大腿直筋、大腿二頭筋、腓腹筋の順で活動を開始すること、全力試行に近づくにつれて、前脛骨筋の放電開始と他の筋の放電開始の時間差が大きくなり、各筋の活動量が漸増する傾向が見られたという。後者については、主働筋である腓腹筋の活動にともない、前脛骨筋の活動も増加することを認めている。
本研究は、ウォーミングアップの効果の基礎的研究として行われたものであるが、跳躍運動の強度の漸増にともなう筋活動の様相の変化をとらえるというところに特徴を持つ研

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION