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6. 高齢者歩行

図9の右は85歳の高齢者歩行、左は1歳の乳幼児独立歩行習得初期の筋電図である。
高齢者の歩行は、背中と膝がまがり、小股すり足でスロースピードであるのが大きな特徴である。

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図9高齢者歩行(85歳)と乳幼児歩行(1歳)の筋電図

両者とも中腰体前傾姿勢のため、接床期の間(1印)、内側広筋、大腿二頭筋、大殿筋に強い持続放電がみられ、成人の日常歩行に比し筋負担が大きい
着床前(→、印)の腓腹筋や、接床期の間て←印)の前脛骨筋に強い放電がみられる場合が多く、不安定な歩行であることを示している
高齢者歩行を筋電図の面からみると、成人歩行に比し、接床期の間、下肢筋に過剰な筋放電がみられた。日常歩行や速足歩行ではみられない前進力の得られる踵押し上げ時にジョギングと同様ハムストリンクスが参画した。これは体前傾姿勢に起因していることを示している。特に体重負荷のかかる接床期では、中腰体前傾に働く内側広筋、大腿二頭筋、大殿筋に強い持続放電がみられ、1歳頃の乳幼児独立歩行初期の放電様相に極めて類似していることがわかった3、4、6、10、11)。
このことは、高齢者の歩行は成人歩行に比べ、かなり多くの筋を使い、過緊張状態で歩いていることを示している。高齢者の歩行動作は幼児に類似してくると言われているが、今回の動作・筋電図実験から、高齢者歩行は筋力やバランスが十分に発達していない歩行習得初期の非常に不安定な歩行パターンに戻ってきていることが示唆された。

 

 

 

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