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8.家族政策の影響と結果

 

社会・家族政策の影響と結果を分析するにあたり中心となる変数は貧困、女性の就労率、出生率などである。スウェーデンの家族政策の最も重要な目的は、すべての子どもに良い人生のスタートを保障することにおかれてきた。そして、もうひとつの目的は男女間の平等であったといえよう。これらの目的を達成するために、スウェーデンの家族政策的対応はどう関連しあってきたのか、またその目的達成度についてWennemo(1996)の国際比較研究(Luxembourg Income Study、比較国スウェーデン、スイス、フィンランド、デンマーク、ベルギー、ノルウェー、ドイツ、オランダ、オーストリア、カナダ、フランス、イタリア、イギリス、オーストラリア、アメリカ、アイルランド)を参考にまとめてみたい。

 

子どもの経済水準:
すべての子どもに対して良い経済的水準がどのくらい保障されているかどうかを左右するのは、まず第一に各国の経済水準そのものである。第二の要因は、無子家庭と比較したときの有子家庭の所得水準である。第三番目の要因は、有子家庭間の所得格差である。上記の国際比較によると、最も貧困な家庭の子どもに対して最も高い所得水準を保障する国は、スウェーデンとスイスである。また、フィンランドとスウェーデンをトップとするスカンディナビア国は、子どもに対して最も平等な経済的条件を保障することが明らかである。貧困家庭の子どもが最低の水準におかれている国が、アメリカとアイルランドである。アイルランドに関しては、国自体が比較国のなかでは最も貧しい(GNPが低い)ことと、多子家庭の多いことによるものである。アメリカに関していえば、富裕な家庭の子どもは世界中で一番高い経済水準を保持し、貧困家庭の子どもの経済水準の6倍に達する。しかし、子どもの経済水準が最も不平等な国であり、不平等性は国の経済資源の欠乏によるものではないことは明らかである。
貧困家庭に育つリスクや子ども間の経済的不平等に関していえば、スウェーデンとアメリカは極めて対照的なポジションにあることが指摘される。一人当たりの生活水準の平均はアメリカの方が26%高いにもかかわらず、スウェーデンの子ども(10分の1%につき)の世帯所得はアメリカの子どもに比較して44%も高い。また、スウェーデン国内においてみると、所得の不平等性や相対的貧困は大人より子ども間の方が少ないことがいえる。また、80、90年代他の多くの国では子どもの貧困化が指摘されるが、スウェーデンでは存在しないことも事実である。スウェーデンとアメリカの格差は、富裕な家庭から貧困家庭への再分配を可能とするスウェーデン社会政策の普遍性に起因することが明らかである。

 

 

 

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