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6.現代の家族形成とその動向

 

6.1 家族構造・形態の変化

スウェーデンが貧しい一農業国から生活レベルの高い豊かな工業先進国に発達していったのはここ150年間のことである。社会変革は同時に、家族構造や形態にも大きな影響を及ぼしていった。

 

今日スウェーデンは、近代化された家族生活を営む国として国際的に引用されることがしばしばである。近代化された家族生活を表現する言葉として、もっとも適切でありよく使われる言葉は「共働き家族」であろう。とくに注目されるのは、家族形成とその解消、女性の高い就業率にみられる変遷であり、また近代的な家族法、有給育児休暇や保育所の拡張により共働き家族が社会的に容認を受けてきたという事実である。

 

この章は、まず共働き家族の発展はどういう要因によってもたらされたのか、またこの発展がスウェーデンにおける「家族」の在り方にどのような影響を及ぼしたのか、実際の家族形成や解消の歴史的発展を通して考察するものである。そして最終的に、家族形態の変遷が出生率の動向とどう関連するのかを分析するものである。
家族形態の変化の記述に入るまえに、家族の定義を明確にする必要がある。人生のさまざまな段階において、人は異なった家族に属する。成人にとって家族とは普通、自分白身が親の世代に属する家族を指すであろう。しかし、ときには自分が成長した家族を指す場合もある。また、高齢者は家族を考えるときそれは子どもであり孫であるかもしれないし、自分が形成した核家族であるかもしれない。この場合には、家族とは一族とか近親という意味を持ってくる。家族という言葉はこのようにして、「母親、父親、子ども」という小さな核家族から、数世代を含む近親あるいは一族というひとつの大きなサークルまでも定義するものである。
統計上でいうと、スウェーデンでは普通使用される「家族」ということばは核家族を指し、また同じ核家族に属するとみなすには同居を前提とする。核家族は最高二世代までに限るものである。家族と世帯の定義上の共通性は、同居人が誰であるかということである。さらに、家族定義は婚姻一非婚姻(事実婚)関係と親一子関係によって分類される。つまり、有子あるいは無子の婚姻(夫婦)あるいは非婚姻カップル、そして子どものいる一人親(単身男性あるいは単身女性)はひとつの家族としてみなされるが、子どものいない単身者は家族とみなされない(SCB 1994:2)。

 

 

 

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