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4.社会政策の一環としての家族政策の発展

 

4.1 1960年代以降の家族政策の新たな展開

従来の家族政策は、1960年代半ばに新たな展開を遂げたといえる。
1965年、有子世帯に対する社会の経済的援助の検討を目的とする家族政策委員会が設置された。委員会は1967年に「児童手当金と家族追加手当金」(SOU 1967:52)という調査報告書を提出し、さらに1972年には「家族援助」(SOU 1972:34)という報告書を提出した。
報告書「児童手当金と家族追加手当金」は、1930年以降の家族政策の歴史的発展をふまえて、人口問題的視点から公平ならびに選択の自由というモチーフヘの家族政策の転換を明らかにした。これによって家族政策は、人間の一生における生活水準の格差縮小を目的とする社会政策の一環として位置付けられていくことになった。子どもの誕生や、あるいは低所得世帯ならびに多子世帯であるがために引き起こされる生活水準の低下を縮小する手段として、家族政策の役割が求められていった。
1972年の報告書は、女性就業率の増加にともなう共働き世帯の一般化を指摘し、育児と就労の両立を可能にする保育事業などの拡充の必要性が家族政策の重要な課題として取り上げられていった。

 

Himofors(1992)は、1960年以降の家族政策の発展を3つの政策分野に分類するものである。第一の政策は、母体保護/妊婦保健、小児保健、保育事業、学校教育など公的財源によって運営される公共サービスである。第二の政策は、各種手当金である。手当金は、子どもにかかる経費への手当金(児童手当金)と子どものケアに対する手当金(有給育児休暇手当金)に大きく分けられる。第三の政策が、有子世帯に対する課税控除などの課税軽減である。この章においては、第一と第二の政策、すなわち有子家庭に対する公共サービスと手当金の発展を中心に取り上げ、スウェーデンの家族政策の概要を明らかにするものである。

 

4.2 公共サービス

 

4.2.1 家族計画ならびに母子保健

避妊:
産児制限に対するスウェーデン社会の姿勢は、1960年末に至るまで中立的であったといえる。望まれない妊娠に対しても、社会が介入する必要があるとはみなされ

 

 

 

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