2.2 社会政策とは
Elmer(1994)によれば、人々の妥当な生活条件を保障するために、あるいは社会問題を解決もしくは予防するために、国が直接あるいはコミューン(地方自治体)や他の組織(たとえば労働組合)を通して行なう目的行為を社会政策と呼ぶ。何が社会政策に属し、何が属さないかということは必ずしも一致した見解が存在するわけではない。Elmerによれば、経済政策や安全秩序(たとえば司法制度、しかし更正保護は限界領域に入る)は、社会政策に属さない。社会政策とその対象領域を厳密に定義するには、他の政策とその対象領域を定義する必要がある。このような複雑さから、社会政策の理論的な定義よりはむしろ実際的な定義を試みる学者もいる。たとえば、Nygren(1994)は以下の目的を持つ公共団体の行為を総称して社会政策と呼ぶ。彼の定義範疇には、経済的な行為も含まれる。 ●疾病、失業、老齢、出産、その他の理由により就業生活が妨げられる場合、所得喪失に対して生活の安全を保障する ●国民の所得ならびに生活条件を均等にする ●量的に十分でしかも質的に高いさまざまな形態のケアを供給する ●労働力再生産の継続を保障し、一定の出生率確保と子どもに対して健全な発達環境と良い教育を保障する ●経済発展と社会経済における経済安定を促進する ●労使間の対立緩和と社会コントロールを維持する また、社会政策の対象領域も狭義あるいは広義に定義するかによって異なってくる。最狭義にとらえる場合は、労働問題に関する政策のみを社会政策と称する。しかし、Nygrenのように最広義にとらえる場合は、経済政策も含めた公共政策の全体を社会政策とし、スウェーデンで使われる社会政策は広義の方に入るといえよう。 2.3 第一次・第二次大戦間の社会政策
二つの大戦を挟む期間は、経済的にも政治的にも不安を呈し、1929年の世界大恐慌は多くの先進国に大量失業者をもたらすにいたった。その折り、金融財政政策を通じて有効需要を増やし、遊休設備の完全利用を達成するという需要喚起策を提唱したケインズ理論の登場は、危機の有効な解決政策として積極的に受け入れられていった。グンナール・ミュルダール達によって代表されるストックホルム・スクールの経済学者によるケインズ理論の導入はまた、失業による生活の困窮対策と公共部門の拡張という点で社会政策の活性化を促すにいたった。1932年、社会民主党が政権を得たことによって国内における政治的な力関係が変えられたことも、さらに社会政策の拡張を可能にしていったといえよう。ミュルダール(Myrdal)夫妻(1934)の人口問題の危機への提案も、住宅政策ならびに家族政策分野での改良政策を推し
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