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2. スウェーデンの社会政策とその特徴

 

2.1 社会政策モデルの国際比較

 

スウェーデンがどういうタイプの福祉国家であるのか、あるいはどういう社会政策をとるのか考えるとき、分かりやすいひとつの出発点となるのが経済市場、国、家族という三種類の扶養システムの関係である。つまり、人々の扶養(生活の安全)責任がどこにあるのか、あるいは責任が三者間でどのように分担されているかということによって、福祉国家のモデルが異なってくるからである。Espig−Andersen(1990)によれば、これらの扶養システムの関係によって資本主義的福祉国家は、保守的、自由主義的、社会民主的福祉国家の三つに大きく分類される。
ドイツは普通、国が経済市場と家族に対して制限的な社会政策を実施する、保守的な福祉国家モデルを代表する国として引用される。このモデルにおいては、家族が扶養と養育・介護などに最大の責任を負うものである。
自由主義的国家を代表するのは、アメリカ、オーストラリア、イギリスなどの国であるが、これらの国においては経済市場が保険、ケア、介護などの福祉ニーズに対して最も重要な役割を演ずるものである。経済市場や家族が人々の扶養やケアに対して無力なときにのみ、国ははじめて最小限介入する形をとる。これらの国においては、貧困者とか必要な人だけを対象とする選別主義的な社会政策が中心となる。
以上二つのモデルに対して、スウェーデンによって最も代表される社会民主的福祉国家モデルでは、国が国民の生活の安全と福祉に最大の責任を負うものである。このモデルの特徴としてあげられるのが、大きな公共部門、高い税負担、完全雇用政策(労働/就労権の保障)などである。すべての人を対象とする包括的・普遍的原則を基本とし、したがって資産調査を前提とする生活保護給付は、他の二つのモデルのそれと異なり所得保障の最後の手段として存在するものである。また社会保険給付もナショナル・ミニマムの最低限保障ではなく、それぞれの所得の大きさに比例して支払われる所得喪失保障を原則とし、ある一定の生活水準を保障するものである。

 

これに加え、Korpi&Palme(1993)は福祉国家を社会保険制度の比較を中心に、さらに細かく四つの社会政策モデルに分類している。
1.救貧型
貧困者のみを対象とし、資産調査による定額給付を基本とする。国は就労権を保障するものではなく、扶養の手段として労働を強制する機構であり、人々の生活困難に対して、最後に補完的な役割を果たすものでしかない。アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドがこのモデルの代表国

 

 

 

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