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先頃発表された我が国の人口推計によると、今年1997年に65歳以上の老年人口が0〜14歳の年少人口を上回り、ますます老年人口比率が高まるといわれています。これは我が国の出生率が予想外の低下傾向にあることが大きく影響していると指摘されています。
周知のように、このような我が国の人口事情は社会の変化、人々の意識の変化が複雑多様に影響しているところですが、人口再生産率を下回る低出生率の問題は、高齢化先進国にほぼ共通した課題でもあります。しかし、各国の少子高齢化への対応については、対策をとっている国、いない国とまちまちで、また対策を採っている国々でも国情によって講じている施設内容は多様なようです。
当エイジング総合研究センターは、この現状に鑑み、高齢先進国における少子化社会研究は極めて重要であり、少子高齢化事情とその対応を考察することは今後の日本の方向性を探るうえで、非常に意義あるものと考えます。
幸い当センターは、各国に調査研究協力を依頼できる人的関係もあり、少子化研究もこれまでの高齢者福祉研究とほぼ同様の方式で実施することが可能であることから、本年度より新たな調査研究事業として、主要国の少子化の現状とその対応策を調査研究することに致しました。そして、初年度の対象国として我が国でも関心が高いスウェーデンをとり上げ、スウェーデン在住20年で、折りにふれスウェーデン福祉の現状を日本に紹介されてきた訓覇法子さんに調査研究をお願い致した次第です。
スウェーデンは、ご承知のように包括的な福祉政策を推進し、1970年代には女性の社会的就労と出産・育児の両立が可能な社会システムを創り上げたといわれています。そして、低迷していた出生率も1990年代前後には人口置き換え水準にまで回復した国であります。本調査研究では、社会変化との関連でどのように社会政策がすすめられてきたか、難解な家族や夫婦の形成、人々の生活行動や意義の変化、さらには社会経済状況が様々に影響しあう中で結果として現われる出生動向を、その出生率変化を縦軸にしてとりまとめて戴きました。訓覇法子さんのご尽力、そしてご協力下された人口学のブリッタ・ポエム博士等各位に厚く御礼申し上げます。
最後になりましたが、少子高齢化というテーマが未だ社会的認識の低かった時点で、この国際研究プロジェクトにご理解下さり、研究助成下さった、日本財団に対して深甚より感謝申し上げる次第です。

 

平成9年2月

 

社団法人 エイジング総合研究センター
理事長 高木文雄

 

 

 

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