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6−2 今後の課題

 今まで、本調査のまとめとして赤煉瓦建造物群の保存活用について各種の提言を行ってきたが、当面の行うべき課題をまとめるこにより本報告をしめくくりとする。

?舞鶴赤煉瓦まちづくり連絡協訟会の設立
 今まで述べてきたように赤煉瓦建造物郡の保存活用は、舞鶴市の将来を担う重要な課題である。それとともに、単に文化財としての保存にとどまらず暮らしや産業の活性化等を伴う総合的課題といえる。このため、各界各層の協力が不可欠であり、調整すべき課題も多く存在する。したがって今後の赤煉瓦によるまちづくりを推進していくために、市民各界各層が参加した連絡協読会の設立が望まれる。当面はゆるやかな準備会的なもので始めるなど、とにかく交流の場、自由な議論の場を是非創り上げてほしいと考える。

?赤煉瓦まちづくり構想のとりまとめ
 舞鶴市の赤煉瓦まちづくりは、平成に入ってからの市民運動の活発化や、市における赤れんが博物館、市政記念館の建設など、この間は大きな盛り上がりとなり、赤煉瓦のまちづくりが市の柱として確立された感がある。しかし、現在はこのまちづくりの新たな方向性が見出されておらず、まちづくりの盛り上がりは以前程活発ではない。今後どのように赤煉瓦を活かしてまちづくりを進めていくのかということを、前述した「まちづくり協議会」等をべ一スにして、基本的な構想を検討し、市民、行政が一体となって取り組む必要がある。

?「(仮)赤煉瓦まちづくり要綱・条例」の検討
 失われたものは2度ともどらない。今回の提言の中で核をなすものは前述した「(仮)赤煉瓦まちづくり要綱・条例」ということになろう。むずかしい条件が山積していることは承知しているが、舞鶴の個性あるまちづくりのために、要綱・条例化の検討が必要と思われる。但し、無理はしないで、できることからとりくむという視点で検討することが大切であろう。

?「文化財登録制度」の活用
 1996年文化庁は今までの指定文化財に加えて「文化財登録制度」を施行した。これは、従来の指定文化財が保存改修や使用方法に種々な制限を受けるのに対して、文化財を自由に活用することを念頭においてゆるやかな制度である。対象となるものは建造物であるが、トンネル、煙突などの土木構造物や工作物も含まれ、建築後50年以上たったものが資格をもっている。
 登録文化財として認定されると、義務として届出(滅失、変更等)が必要となるだけで内部の利活用等は自由に認められる。また、登録すると税制面(固定資産税等)の減税措置が得られるのと、改修に対する低利融資も可能となる。既に第一回の登録が終わり、全国で119件が登録された。この内の多くは、この制度の先導的趣旨も踏まえて公共所有物件がしめている。舞鶴市の赤煉瓦建造物の多くがこの対象の有資格者といえ、まず公共所有のものから登録申請を行っていくべきであろう。
 赤煉瓦建造物が貴重な歴史的遺産であるという市民意識を譲成させ、広く紹介するとともに、民間施設への波及を図るためにも、市が率先し、市所有の赤煉瓦建造物(市政記念館、北吸配水池、桂貯水池、北吸トンネルなど)を国の文化財登録制度に登録など積極的に進めていく必要がある。

?緊急物件の保存方策の検討
 調査した結果、崩壊が著しく緊急な対応が望まれる物件も存在する。これらについては、適切な防災措置を講ずるとともに、緊急な保存方策の検討が必要である。

 

 

 

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