
3.16 Norsk Hydro a.s.研究センター
面談したFurnes博士はもともとはベルゲン大学の海洋物理研究所で流れや波浪のモデリングに関する研究をしていた方で、現在はノルウェーでも屈指の石油会社の一つであるNorsk Hydroの海洋工学セクションに移り、石油掘削のプラットホームから排出される産出水(Produced water)の移動・拡散やその生物影響に関するモデリングについてアドバイザーをしておられる。3.7で言及した大陸棚石油研究所で開発中のPROVANNもこのモデリング事業の一部である。 排出油分濃度の規制値は最大40ppmであるが、将来的には20ppmが目標とされている。北海全体の産出水の総排出量は1993年に187×106m3(この内ノルウェーは26×106)であったが、1997年にはそれが340×106m3に増加する見込みである。 さきに3.7で述べたように、プラットホームによって産出水の組成や化学成分が異なることがモデルによる予測や環境管理を難しくしていることから、重要な課題の一つとして産出水の化学成分に関するデータベースの整備が進められている。また、産出水の化学成分やその生物濃縮の特性を実地に調べるため、浸透性のポリマーの膜やムラサキイガイをとりつけた係留系によるプラットホーム近傍での継続的なモニタリング(Statfjord Cの例では、排出源から100m、300mおよび16kmの3地点でそれぞれ2〜3層)が実施されている。すでに1990年から5年間の流れの計算は終了しており、そのモデルに産出水の量・濃度・組成を入力して現状診断のシミュレーションを行うことが計画されている。 4. 調査結果の総括
4.1 海洋における生物生産増大のための実験的な調査研究 しばしば指摘されるように、世界の人口が増加しつづける中で人間社会の持続的な発展を可能にしていくためには、将来にわたって食糧資源を確保していくことが必要である。しかしながら、陸上における生物生産を現在のレベル以上に高めることは難しく、その意味で海洋の潜在的な生産力が注目されている。ノルウェーで1996年から5年計画で開始された海洋肥沃化のための基礎研究プログラムMARICULT(3.4参照)は、まさにそうした方策の具体化に向けたアプローチの一つといえる。組成のはっきりした栄養物質を環境への影響の最小化をはかりながら最も効果的なやり方で海洋に添加し、植物プランクトンや海藻類の生産を底上げするとともに、それをうまく食糧資源やエネルギーに転換し同時に二酸化炭素の吸収・固定の能力を高めようとするその構想(図11)はとりたてて新し
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