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重要であり、また仔稚魚は主に表層混合層に分布していることから、年々の風の変動が資源に与える影響の大きさが示唆されている。そこで現在はさらに海洋の現場で乱流の変動実態を観測するとともに、MARICULTの一環として人工的に乱流を制御することのできるメソコズムを開発し、乱流の変化が生物生産や仔稚魚の摂餌に与える影響を定量的に明らかにするための実験を開始している。
一方、このようなマダラの資源変動の問題も含めて、海洋研究所が中心となって取り組もうとしている研究プログラムの一つにGLOBEC (GLOBal ocean ECosystem dynamics)がある。これはSCOR(海洋研究科学委員会)やIOC(政府間海洋学委員会)などの支援を受けた国際的な研究計画で、グローバルな気候システムのもとで海洋の物理過程が海洋生態系の食物網や生物の個体群変動にどのような影響を及ぼすかを明らかにし、気候変化にともなう海洋生態系の変動を予測することを主な目的としている。ノルウェーでは海域や生態系の特性にもとづき、以下の3つの課題を中心に計画の検討が進められている。
1. 気候―海洋の相互作用の解明(OCEAN CLIMATE):ノルウェー周辺の海域の海洋生態系にきわめて大きな影響を及ぼす北大西洋海流(Atlantic water)のノルウェー海への流入量の時系列変動をはじめとして、気候変動にともなって引き起こされると考えられるさまざまな海洋変動のメカニズムを解明し、変動予測モデルを開発する。
2. 資源生態系の構造と機能の解明(RESOURCE ECOLOGY):ノルウェー海およびその周辺海域の主要な動物プランクトン、マイクロネクトンおよび魚類について生活史と個体群動態ならびにその変動要因について研究を進め、生物資源につながる浮遊生態系(図20)の構造や機能の変動のメカニズムを解明する。また、得られた知見にもとづいて資源変動予測モデルを構築する。
3. 炭素循環の解明(CARBON CYCLE):生物ポンプなど上層で生産された有機炭素(生物起源物質)の鉛直方向の輸送にかかわるプロセスに海洋の物理・生物過程がどのようにかかわっているのかを定量的に明らかにし、ノルウェー周辺海域における炭素の取り込みの大きさやその重要性を評価できるモデルを開発する。
いずれの課題についても、変動のプロセスやメカニズムを定量的に明らかにし、将来の変動予測を可能にすることに重点がおかれている点が特徴的である。

3.12 ノルウェー漁業省海洋研究所増養殖部

まずPUSH (Programme for the Development and Encouragement of Sea Ranching)の中心メンバーの一人であるSvaasand博士と面談した。この研究プログラムは、海洋牧場により

 

 

 

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