
有機炭素(DOC)の果たす役割の重要性に関する最近の研究結果の紹介を受けた。現在グリーンランド海(図2)でEUプログラムESOP (European Sub-polar Ocean Programme)の一環として、深層水の形成とその後の挙動を追跡するためのトレーサー実験が開始されており、その中で彼らは主に炭素循環のタスクチームに参加してDOCの季節的な変動と生物生産との対応に関する現場観測を続けている。 次に面談した♀stgaad教授の専門は環境工学で、生物特性を利用した廃水処理技術などの開発の現状に関する話をうかがった。ノルウェーではリレハンメル冬季オリンピックを主催した際に、リレハンメルモデルと呼ばれる従来よりも効率の良い窒素除去システムが開発されたそうであるが、この分野の研究はノルウェーではまだ歴史が浅くこれからの発展が期待されている。 3.7 大陸棚石油研究所
訪問した大陸棚石油研究所の環境関係の部門では、偶発的な油の流出事故による環境や生物への影響を最小限にくい止めるためのさまざまなシステムの開発を行っている。当初は油の漂流・拡散やその間の変質、濃度変化の予測モデルの開発とその現場での検証実験に重点がおかれていたが、最近はさらにそれを生物への影響や処理対策の効果などの評価モデルと連結した実用的なシステムの開発に進んでいる。1995年から幾つかの事例について検証実験が開始されたOSCAR (Oil Spill Contingency And Response system、図14)はそうしたシステムの代表的なもので、流出した油の漂流経路や濃度分布、さらには周辺の生物への影響の大きさなどに関する予測にもとづき、どのような処理対策が最も経済的で効果的かを判断できるようになっている。Reed博士とAamo氏に、Windows95上での動作についてのデモンストレーションも含めてシステムの概要を説明してもらった。たとえば図15は、風速10m/sの条件下で性状が既知の油100m3が流出した場合の高濃度部分の広がりと表面の油にさらされる度合の時間変化を、幾つかの処理方法について比較したものである。この事例では、油の回収作業の開始が流出から1時間後でも3時間後でも結果に大きな違いはみられないが、10時間後では油が広がって処理効果があがらないこと、初期の分散剤の使用が効果的であることが分かる。できるだけ早期に油の回収を始めることが望ましいのはいうまでもないが、仮に3時間後までの遅れを許容できれば、油処理の機材を幾つかの地域で共有することも可能となる。魚卵や仔魚の多くは海表面で浮遊生活をしているので、油にさらされる度合は生物資源への影響をはかる目安となる。流れに受動的な魚卵や仔魚のほかに、回遊性の魚類や海棲のほ乳類への影響を評価するためのモデルが
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