
環境問題、Skei氏は同じ部門の研究主任の一人で現在オスロ大学の教授を兼務しておられ、専門は地球化学であった。Braaten氏からNIVAの活動について全般的な説明を受け、Skei氏からはフィヨルドの環境回復に関する最近の事例の一つとして、S♀rfjordプロジェクトの概要を聞いた。 NIVAは、いわゆるNPO (NonProfit Organization)の一つで(政府が20%出資、100名ほどの科学者が従事)、上記の環境省での討議にもあるように、政府の汚染管理局などに協力しながら沿岸海域の環境保全・改善に関する現場での実務的な仕事を分担している。ノルウェー南西部のスカゲラク海峡を中心とした沿岸海域モニタリング(1990年に開始、少なくとも10年間継続の予定)や水質・底質環境基準作成のための検討作業、あるいは各種のアセスメント報告書作成などはその代表的なものである。最近は、ノルウェー国内に留まらず海外援助の一環としてタイや中国などでも活動している。 最も深刻な汚染問題は重金属など微量汚染物質によるもので、規制が開始される以前に閉鎖性の強いフィヨルドの奥部に工場などから放出・蓄積された汚染物質が、いまだに2次的な汚染源となって海洋の環境や生態系に影響を及ぼし続けている。S♀rfjordプロジェクトはそうした海域の環境改善事業の代表例の一つである。このフィヨルドに立地した亜鉛工場から60年間以上にわたって排出され続けた汚染物質が海底に蓄積され、亜鉛などの含有量の極度に高い底泥(いわゆるhot spot sediments)を形成し(図8)、フィヨルドへの排出が完全に停止された後もこのhot spotからの溶けだしにより環境条件がなかなか改善されなかった。そこで、各種の改善方法の費用―便益を見積もった上で、最も汚染物質濃度の高いフィヨルド奥部(70,000m2)をパイルで締め切りさらにシート(geotextile)で完全にカバーすることによって、汚染物質の溶けだしの影響を完全に遮断する方法がとられた。高濃度の底泥を浚渫により除去することも検討されたが、海底の攪拌によ汚染物質の溶けだしが促進される危険が増すことや浚渫した汚泥の処理方法に難点があり、このケースでは採用されなかった。経費の面では、この事業だけで400万ドルを必要とし政府がその半分を補助したそうである(残りの半分は関係企業が負担)。 3.3 ノルウェー理工大学サイバネスティック工学科
面談したBalchen教授はこの9月に退官され、現在名誉教授として引き続き活動しておられた。専門は自動制御など情報工学の分野であるが、海洋生態系のモデリングやモニタリング、魚類の行動制御、さらには養殖や海洋牧場へのそうした技術の応用など、幅広い興味を持って研究をしておられる。Slagstad博士は、ノルウェーにおける海洋生態系モデ
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