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することになっており、Svelle氏は現在その準備担当事務局の責任者を務めておられる。
北海沿岸を含むノルウェー沿岸海域における主要な関心事は、酸性雨の影響、重金属・人工化学物質などの微量汚染物質の除去と、窒素・リンなどの栄養負荷の削減対策であり、North Sea Conferenceでの申し合わせにもとづき具体的な達成目標(削減の%など)をかかげて各方面の努力がなされている。製品に対する規制(Product Control Act)、下水処理技術の向上、農業排水の規制などにより効果があがってきており、1995年には1985年に比べて窒素とリンの負荷量がそれぞれ40%と50%削減された。表1には参考までに、1991年の時点でのノルウェー沿岸全域からの窒素・リン年間負荷量とその内訳を示す。一方、重金属類や人工化学物質については、水質・底質などの環境基準(環境階級区分)が1993年に水圏研究所(NIVA)の協力により作成されており、現在その改訂作業が進められている。(付録2)。これには水質・底質中の含有量についての基準に加えて、幾つかの生物種について含有量の基準値が定められ、測定値にもとづく環境診断が容易にできるようになっている。
なお、局所的な汚染域を除けば全般的にノルウェー沿岸の環境は良好である。さきに1章で述べたように北海に面したノルウェー海溝に連なる深み(スカゲラク海峡)の海底には、北海に起源を持つさまざまな汚染物質の蓄積が進行していることが懸念されており、NIVA(3.2参照)の協力のもとに継続的なモニタリングが実施されているが、現在のところは生物や生態系に対する目立った影響は検出されていない。この海域を中心として、1988年の夏にノルウェー南西の沿岸海域で発生した有毒赤潮は、その後は沈静化しているようである。また、陸棚域の石油開発に関連した油汚染の問題についても、汚染管理局が中心となって、海洋汚染防止のための国際組織として知られるOSPAR (Oslo and Paris Convention)との緊密な連携のもとに、海洋環境や生物のモニタリング調査のガイドラインの検討・整備を進めている。
後述するMARICULT (MARIne CULTivation)など海洋の生態系や生物生産を人工的に制御しようとするプロジェクト(3.4参照)について、環境省の見解を聞いたところ、Svelle氏自身もその計画検討に参加されたとのことで内容に精通しておられ、ノルウェーでは法的な規制がきびしくリスクも大きいので沿岸での実用化は難しいこと、沖合についても数十年かけて基礎的な調査・実験をやることがまず必要であることを強調された。

3.2 ノルウェー水圏研究所(NIVA)

面談したBraaten氏は海洋環境と生物生態に関する研究部門の主任で、専門は養殖場の

 

 

 

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