日本財団 図書館


 

収を円滑に行うかたわら、処理費用の一部を補助するシステムによっても回収処理を促進する策をとっている。また、地方自治体が廃家電処理のため必要とする処理施設の提供、廃家電処理専用機器の開発研究なども積極的に押し進めて廃家電製品の処理並びにリサイクルについて積極的な取り組みを見せている。

 

3. 廃船処理と廃自動車・廃家電製品処理との相違

以上の通り、廃自動車と廃家電製品は、行政側の強い要請と自主的努力により、廃棄製品について排出者責任を補完する処理システムがほぼ固まっているが、これらが社会的システムとして推進されている背景には、FRP廃船に比べて次のような極めて有利な条件が背後にある。
?@ 廃自動車、廃家電の処理費用の絶対額が数千円から2〜3万円程度であるのに対して、FRP廃船の場合は十数万円にもなることに加えて、車両、家電は製品の主要構成材料が金属であることから、例えスクラップになってもなお有価物である場合が多く、その再生率は自動車の場合で70%以上あり、処理コストへの還元がかなり期待できるのに対して、FRP廃船の場合は、多く見積もっても10%以下に過ぎず、処理コストへの還元がほとんど期待できないため処理費用が一層割高となっている。
?A 自動車・家電の場合は、製品寿命が両者とも10年(長くて15年)程度であり、したがって、新製品の購入者がそのまま排出者である割合が大きく、排出者が購入責任の意識をも有している場合が多い。これに対してFRP船の寿命は、30〜40年又はそれ以上と言う説もあり、最後まで持ち続ける人は殆どないばかりか、最終所有者は無料で譲り受けることも稀ではなく、排出者が購入責任の意識を持つことは殆ど期待できない、と考えなければならない。
?B 自動車の場合は、法律によって登録、車検、届出等の制度と登録又は車両番号票の表示義務が課せられており、車庫法の運用とも相俟って所有者(排出者)の追跡は比較的容易である。また、家電の場合は買替え購入が多く、その際販売店で下取りされる率が高いことから、所有者不明の廃棄物となるケースは少ない。
これに対して小型船(プレジャーボート)の場合は、5トン未満の船舶には法律による登録・届出制はなく、小型船舶検査(船検)制度による検査済票番号が唯一手掛かりとなるものの、番号票の素材の関係から簡単に剥がして放棄するケースが多く、所有者(排出者)の追跡が容易ではない。
?C 自家用車、家電は、所帯当りの普及率は97〜100%に達し、処理の困難性は別として、少なくとも市町村においてこれらの廃棄物は「家庭ゴミ」の一つという認識が持たれているのに対して、プレジャーボートは1%に満たない普及率であるためそのような意識はなく、しかも家から遠く離れた水面等(行政区域外にある場合がしばしばである。)に保管していることも多いことから、法律上「一般廃棄物」であっても殆どの市町村では「家庭ゴミ」とは見ていない。
?D 保有数及び所帯普及率の格差は廃棄物処理業界にも表われ、自動車の場合、ほとんどの都道府県に廃車の解体・処理専門業者が存在するのに対して、廃船の解体・処理を専門とする業者は、広島

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION