
?T. FRP廃船処理の現状
画期的な小型船製造素材としてFRPが登場してから30数年を経過し、わが国でも小型漁船、プレジャーボートを中心に小型船保有数の90%以上をFRP船が占めるようになった。半永久的な耐用年数を持つといわれたFRP船も数年前から老朽化、船型の陳腐化などの理由により廃船となるものが出始め、最近これが加速している。FRP製の小型漁船、プレジャーボートは、わが国ではそれぞれ30万隻、合計60万隻以上が保有され、両者それぞれの廃棄量は年間数千隻から1万隻以上になるという試算も行われており、現在すでに放置できない状況になっていると考えられる。 しかし、軽くて丈夫なFRP船もいざ廃棄となると、他の廃棄物に比べ極めて大型で運搬も厄介であるうえ、廃棄処理する場合の処理技術、処理体制の面で、次のような多くの問題点を抱える厄介な廃棄物となっている。 1. FRP廃船処理技術上の問題点
?@ 破砕には大型の処理機械を必要とするうえ粉塵の飛散を招き、また埋立処理後腐食も減容もしないため、埋立地の再利用にも悪影響をもたらす。 ?A 減容のために焼却すれば、高熱と大気汚染・悪臭物質を放出したうえ大量の半溶融ガラス線維を残して焼却炉を傷める。 ?B FRP廃船は再使用できる部分が少なく、かつFRP部分の廃材のリサイクルには高額な費用を要する割りには良質な再生素材が得られにくい。 したがって、現実にはコストの関係から、破砕・埋立て以外の処理方法は殆ど採用されていない。 しかし、FRP船は廃棄処理が困難だからといって、今さら他の素材に乗り替えることは製作コストの安さも手伝って難しく、FRP廃船について、廃棄物処理政策に合致し、かつ経済的な処理技術、リサイクル技術を早急に見出す必要が指摘されている。 2. プレジャーボート廃船処理体制上の問題点
処理体制上の問題点は、次の五つに集約できるが、その他に、産業廃棄物となるべき小型漁船も15〜20年使われた後漁船登録から外れ、個人の手に渡って必然的に釣り舟などのプレジャーボートという扱いになり、最後は一般廃棄物として処理されるものも見られること、また、これらのFRP製小型漁船は廃船となる段階では産業廃棄物として処理されることになるが、同じFRP廃船が法制上の関係でプレジャーボートと違ったルートで処理されるための効率の悪さが、リサイクル等の技術開発の促進や再生品のコストダウンを阻害している要因の一つになっていることも、問題点に加える必要があると思われる。
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