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また相談所の運営について重要なことは、前述したようにその場にくる相談者のみを重視せずに、電話やFAXで相談する人をおろそかにしてはいけないということである。従って相談員の配置は、当然苦労する所であるが、正規の職員だけでは絶対に不足するので、状況に応じて地域の行政相談委員にも協力してもらう必要があるし、それでも足りない場合には、正に前述した公務員のOBによる行政相談ボランティアの起用を真剣に考えるべきである。そのようにして、その場にくる相談者に対応する相談員と電話やFAXでの相談に対応する相談員をはっきり分け、分業体制をあらかじめ作っておくことが必要である。

 

イ.弁護士や各種の専門相談員の支援体制の確保
行政相談の立場からしても、震災後の相談には、借地・借家関係などの法律相談、登記手続きなどの土地・建物の登記相談、減免などの税務相談、雇用保険などの社会保険に関する相談、住宅の応急修繕相談など、特定の専門領域に関する詳しい知識の必要な相談が多いことは予測される。このような相談に関して、行政相談の担当職員や行政相談委員だけでは、必ずしも効果的な回答がすぐにできるとは限らない。従って、予測される相談の内容に応じて、弁護士や司法書士、税理士、あるいは社会福祉関係など各種の専門相談員による支援体制を確保することが望まれる。これも、緊急時だけの問題ではなく、普段から、このような専門家との協力体制を整備しておかなければ、緊急時にすぐ対応することはまずできない相談であるので、これもまた日頃の連携が肝要である。
ただ単に申合せに参加してもらうだけでなく、実際に普段の国の行政に関する相談にもその識見を活用する方法を考えることが急務である。やはり普段からすべての行政相談を担当職員だけでカバーするのではなく、専門的な事柄については、専門家の意見を聞いて最終判断をするよう努め、また出先に行政相談所を開設する際には、できるだけ民間の専門家の参加も求め、いわば大規模災害時の連携のための予行演習の役割を果たすと同時に市民にもより役に立つ相談を平常時から行うことが重要であるといえよう。

 

(4)FAX・パソコン通信・インターネット等新メディアの活用

 

緊急時には、当然電話回線の不通や、交通の遮断、ラジオ・テレビなどの放送局の被害、あるいは停電による受像・受信不能の事態なども考慮しておかなければいけない。従って電話・ラジオ・テレビなどのポピュラーなメディアが利用不可能になったとき、いわばバイパスとして、FAXやパソコン通信、インターネット等の新メディアを活用することも必要である。また、案外に携帯電話の利用価値も高かったように思われる。携帯電話は基地局が被害に遇わない限り、通じる範囲が、一般の電話より広かったといえよう。またISDN回線の方が不通の電話回線に比べ、安定しており、不通の度合いが低かったといえよう。実際、阪神・淡路大震災の折りも、電話は不通であったのに、パソコン通信やイン

 

 

 

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