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発刊にあたって

 

今、時代は大変動期に入ってきています。時の内閣総理大臣もことあるごとに「明治維新と第二次大戦終了後と同じような変革」が求められていると発言しています。ただ、現在私たちが当面している大改革は外圧によるものではなく、内部からのエネルギーによってしか成し遂げられない、ということです。そして、これは、「上から」の単なる制度の変更ではなく、市民一人ひとりの参加がなければ成功しない性格のものです。

この歴史的転換は、市民の意識と行動の変化としても現れてきています。その一つがボランティア活動で、阪神・淡路大震災以降急速な発展をしめしています。一人ひとりの市民が社会参加をし、政治と行政に「お願い」するだけではなく、「自分たちで解決できる問題は自分たちが汗を流し、知恵を出し合おう」という流れが形成されてきているのです。

他方、自治体に大きな期待と熱い眼差しが注がれてきている時代でもあります。人の生活に密接に関係する地域社会の軸である自治体の役割増大は必然的な流れです。自治体がその機能を十分に果たそうとするならば、市民の自主的な協力が絶対的な条件になるでしょう。ここにおいて、自治体とボランティアのパートナーシップの形成という課題が浮上してきます。

この報告書にあるシンポジウムは、以上のような時代認識を踏まえて、時代の要請に応えられる「創造的なボランティア」を育成すること、そして、「ボランティアと自治体のパートナーシップのあり方」について検討することを中心課題にしました。この企画に対して、宮城県、仙台市、埼玉県、狭山市、静岡県、静岡市、大阪府、守口市、岡山市、福岡市においては快くご協力いただくと共に、アメリカからはアナ・ミヤレス女史、地元のボランティア団体等のリーダーのご協力をいただき、いずれの会場も満員の参加者を得て実施できました。

わが国の抱える重大な課題解決のためには、自立した市民の積極的な社会参加と自治体の機能を急速に高めることが不可欠の要素になります。このシンポジウムはそのための問題提起と課題解決のための素材提供の役割を果たしていると自負しています。

社団法人 長寿社会文化協会(WAC)

理 事 田中 尚輝

 

 

 

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