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されるという見方もできるであろう。

しかしながら、依然として不明な点もある。たとえば、いかに規制緩和をするといっても、貿易政策や金融政策を策定するためのデータとして、貿易財の取引や資本取引、外貨準備等といった国際収支表の勘定科目についての調査・監督は依然として継続する必要があり、為銀主義が撤廃された後はどの機関がどのようにしてこのような資金の流れを把握するのか、という問題がある。このことは電子商取引に関わる個人・団体が、国際取引の監督機関から何らかの監査を受けるべきだという議論を生じさせかねない。プライバシーの保護等別の観点からの議論も考慮しつつ、政府・行政の動きを見極めていくことが必要になると思われる。

また、個人間の為替の取引が増加した場合、為替レートはどこで決定されるのか、という問題が生じる。今までのように外国為替市場で決まっていた市場レートを用いるのか、それとも何か別のレートを用いるのか、そうだとすればそれはどの時点で、どのように決定されるのか、といったことは決して自明なことではないと思われる。この点については外国政府や、中央銀行の動きも大きく関わってくる問題であると思われ、日銀法改正等を含めて、今後の議論の行方に注目している必要がある。

 

(2)証券市場の規制緩和

現在の日本の証券市場の低迷の一因は、高い株式売買手数料や様々な規制等、制度面における問題が市場の効率性を妨げている結果、投資家がより規制の少ない海外市場に逃げてしまった結果である、とする議論が最近多く聞かれる。関係当局も金融制度改革の一環として、この証券市場の規制緩和に取り組む姿勢を見せている。

ところで、そもそも間接金融を営む銀行業務と異なり、投資家と企業を直接仲介する、いわゆるブローカー業務を主とする証券業務にとって、原理的には同様の機能を持つインターネット等ネットワークの発展は、その存在基盤の一角を揺るがす存在になる可能性がある。事実、米国では証券会社や投資信託会社がインターネットの活用を積極的に進めているが、このような動きを受けてSEC(証券取引委員会)やSRO(自主規制委員会)等の証券市場規制・監督当局も既存の規制・制度の見直しを進めている。例えば、会社の事業内容や財務状況に関する情報を開示する目論見書や証券売買に関する約定報告書、運用状況報告書などの電子化を容認している。

日本でも一部の証券会社でインターネットによる株の取引が始められており、また証券

 

 

 

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