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3−2−2 まとめ

これまで、今後の法制度整備に向けて障害となると思われる点について、対象用件及び関連法制度の整理を行ってきたが、これらを総括する意味で最後に留意点をまとめておく。

商法や民法を始めとする現行の法制度は電子的なデータのやり取りによる取引の形を前提としていないので、電子決済、電子商取引の健全な運用に向けて、本格的な法制度面での整備が不可欠である。法制度について考えていく上で考慮すべきポイントとしては、次の3つのようなものが考えられると思われる。

 

?@ 現行の法律では不都合が生じないか

従来型の商取引の前提と電子商取引における状況の食い違いのため、現行法をそのまま用いると問題が生じる恐れがある。

?A 現行の法律で十分に定義が可能か

各要件の定義があいまいなままであると、後々のトラブルの原因となり、また普及に際しても不要な不安を使用者に抱かせることになる。

?B 現行の法律が電子商取引の利便性を害していないか

特に問題が無いと思われる場合には、技術の発達した現状にあわせて法制度の見直しをしていくべきであると思われる。

 

例えば、「隔地者間の契約の成立は、申込みの受け手が契約に関して承諾の意思を発信した時点で成立する」としている民法の記述は、手紙等時間のかかる伝達手段しかなかった時代の商取引を念頭に置いた取り決めであり、瞬時に情報が伝えられる電子商取引にはなじまない可能性がある、という意味で?@のタイプに分けられる。また、電子マネーをどのような存在と考えるか、という問題、つまり従来から存在している小切手等と同様のものとして捉え、それについて規定した法律を流用することで対応するのか、それともそれらとは異なる全く新しい価値媒体として電子マネーを捉え、法制度的にも新たなものを設ける必要があるのか、という問題は?Aのタイプに分けられる。さらに、取引時に書面の提出を義務づける各種の法制度は、電子商取引の利便性を大きく損なうものとして、?Bのタイプに分けられるであろう。

この他にも、今後の商取引実験等を通して様々な問題が生じてくると思われるが、商取引に関わるあらゆる場面について、上に挙げたような条件を満たすか否かのチェックをし

 

 

 

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