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3−2 商取引分野における電子情報化への制度上の問題

 

3−2−1 電子商取引の障害となりうる法制度の整理

商取引は多くの段階を経てはじめて成立するものであり、様々な行為からなる集合体であるため、その各段階でひとつひとつ問題を検討していく必要がある。以下では、契約に関する問題、認証機関に関する問題、決済に関する問題、国際取引に関する問題、その他電子商取引全般に関わる問題、の順に整理を行う。

(1) 契約に関する問題

?@ 契約の成立時期

民法第526条1項において、隔地者間の契約の成立は、申込みの受け手が契約に関して承諾の意思を発信した時点で成立するとしている。

 

民法 第526条

隔地者間ノ契約ハ承諾ノ通知ヲ発シタル時ニ成立ス

?A 申込者ノ意思表示又ハ取引上ノ慣習ニ依リ承諾ノ通知ヲ必要トセサル場合ニ於テハ契約ハ承諾ノ意思表示ト認ムヘキ事実アリタル時ニ成立ス

 

しかしながら、承諾の意思が回線故障等により申し込み側に届かなかった場合や、送られてきたデータが読み出し不能であった場合等を考えると、この考え方は必ずしも適切ではないと思われる。また、日常的に取引を行う相手同士の場合等は承諾意思の通信コストを避けるために、発注意思の受信時をもって契約とするという単方向のシステムもまた一概に否定されるべきものではない。このように考えると契約の成立時期に関しては検討の必要があるといえる。

参考までに付け加えると、財団法人日本情報処理開発協会の協定書においては、申込の受け手の承諾意思を申込側が受信した時点をもって契約の成立とみなしている。

?A 契約内容の無効・取消

民法では意思決定過程において錯誤のあった場合には法律行為、あるいは意思表示を取り消しうるものとしている(民法第95条)。また、禁治産者や未成年者等行為無能力者が単独で行った行為についても取り消しうるものとしている(民法第4条2項、第9条、第12条3項)。

 

 

 

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