4−2 地方自治体の事例
現在、日本の地方自治体においては、CALSの活用事例は存在しない。さらに、CALSの国際標準の活用もまだほとんど行われていないのが実状である。しかし、電子化による業務の効率化の試みは推進されつつあり、部分的ではあるが効果をあげている。
4−2−1 文書管理システムの事例
煩雑な文書管理と行政事務の高度化の問題に対応するため、ある特別区では文書管理システムを導入している。内部での情報共有・再利用、事務の効率化、意志決定の迅速化などを実現し、住民サービスの向上に役立てている。国際標準の採用や外部機関との情報連携といったCALS的アプローチは現段階では行われていないが、電子情報の活用によって業務の生産性を向上することは、将来のCALS導入にすばやく対応するための環境の整備につながると考えられる。
(1) 背景
新しい条例の施行や文書量の増大、及び行政事務の効率化などの理由により、自治体では文書管理の在り方を見直す必要性が生じていた。しかし、従来のホスト・コンピュータ形式では文書管理の特徴に合致せず、コスト負担も大きいため、問題があると考えられていた。
1986年の公文書公開条例や1993年の個人情報保護条例などの施行によって、自治体では文書管理のあり方を見直す必要性が生じていた。そのような状況において、この特別区では今まで手作業だった文書管理業務のシステム化を検討することにした。
その背景としては、行政事務の高度化や複雑化に伴って事務量が増加し、文書が大量に発生しているという状況にあった。さらに、文書の多くは保管が長期化する傾向にあり、情報過多による文書流通の遅滞や保管スペースの不足なども問題になっていた。
文書管理システムは、こうした文書量の増加によって煩雑化してきた管理業務をコンピュータを利用して効率化しようというものである。ところが、従来のホスト・コンピュータによる形態では、文書管理システムの構築は難しいと考えられていた。
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