3−3 CALSの背景
CALSとは、もともとアメリカ国防総省におけるロジスティックスの改革から始まったものだが、その中心である情報やノウハウの共有と再利用という考え方は、産業界の競争力の強化にもつながると考えられるようになった。
3−3−1 CALSの起源
アメリカ国防総省における後方支援システムの膨大なマニュアル類の管理は、高コストと非効率的な情報管理という大きな問題を抱えていた。CALSの起源は、このようなアメリカ国防総省における電子化によるロジスティックスの改革を目的としたものから発している。特に文書管理に重点が置かれていた。
アメリカ国防総省では、1980年代に入ってから、兵器システムの膨大な資料の管理が問題となっていた。例えば、「F16」戦闘機のマニュアルは約3,500冊になり、イージス艦の文書の総重量は23.5トンに達する。このような兵器システムの関連文書を従来の方法で管理することが非常に大きな負担となっていた。
一方、国防総省は軍事予算の削減を迫られていた。膨大な経費がかかり、さらに非効率な紙によるマニュアルの管理の改善は、まさに国防総省にとって大きなテーマであった。そこで、アメリカ国防総省は文書を電子化し、スペースの節約と迅速な情報検索をめざした。
アメリカ国防総省が抱えていた紙による文書管理の問題をまとめると以下のようになる。
表3−2 アメリカ国防総省における紙による文書管理の問題
問題点 具体的状況
情報管理が不正確である 年間1万箇所の技術マニュアルの間違いが報告された
管理のためのコストが高い 1ページあたり2,000ドル以上のコストがかかる
技術マニュアルが莫大である 年間、20万タイトル、500万ページの追加改訂がある
技術図面が膨大である 年間、10%の増量があり、8,000万のコピーが必要である
仕様及び規格が膨大である 年間、5万タイトル、6,000万ページのコピーが必要である
出典:NTTデータ経営研究所
前ページ 目次へ 次ページ