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第  1  章

情報通信ネットワークの概要


 

1−1 総論

 

1−1−1 サービスの高度化を可能にするデジタルネットワーク

(1) 高度化が進む通信ネットワーク

1985年の電気通信の自由化で、わが国では長距離、国際、移動体などに次々と新しい通信事業者が生まれ、それぞれがネットワークを築き、サービスの多様化と高度化が競われるようになった。こうした中でNTTは2015年までに全家庭までの光ファイバー敷設方針を打ち出したが、折りからの半導体摩擦もあってこれに危機意識を持った米国政府は通信の高度化を国の最重要政策に掲げ、それがヨーロッパやアジアの国々にも波及して各国で高速通信網建設のラッシュとなっている。このことは1984年のAT&Tの分割やBTの民営化以降、通信事業の民営化や競争導入が国際的な潮流となっていることと不可分である。さらに東西ドイツの統一やソ連の崩壊という東西の緊張緩和も、軍事産業から通信インフラへと資金の流れを変えた。また、軍事技術の民生化も情報通信に大いに貢献しており、米国国防総省が順次開放してきたインターネットや衛星ナビゲーションシステムには、通信サービスの新たな可能性が期待されている。このような世界的な通信事業の活性化によって、保護された国内産業だった通信事業は国際競争の場に引き出され、メガコンペティションと呼ばれる大競争時代に突入している。光ファイバーや衛星通信などの高速で広帯域な通信網が家庭まで行き渡れば、電話もパソコンもテレビもファックスも同時に、そして家庭にいても歩きながらでも双方向で利用できるマルチメディア時代となる。

多様な通信サービスが可能になったのは、半導体技術の飛躍的な進歩とデジタル技術の発達によるものである。コンピュータが発明されてから電話網に最初の完全なデジタル交換機が導入されるまで、日本では30年近い年月が必要だった。通信網のデジタル化は関連するエレクトロニクス分野がそれぞれ成長し、互いに刺激しあって進められてきたのである。通信網の高度化をさらに進めるのが光ファイバーとATM(Asynchronous Transfer Mode)交換機である。また、衛星通信技術の進歩も見逃せない。

 

 

 

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