1985年の電気通信の自由化で、わが国では長距離、国際、移動体などに次々と新しい通信事業者が生まれ、それぞれがネットワークを築き、サービスの多様化と高度化が競われるようになった。こうした中でNTTは2015年までに全家庭までの光ファイバー敷設方針を打ち出したが、折りからの半導体摩擦もあってこれに危機意識を持った米国政府は通信の高度化を国の最重要政策に掲げ、それがヨーロッパやアジアの国々にも波及して各国で高速通信網建設のラッシュとなっている。このことは1984年のAT&Tの分割やBTの民営化以降、通信事業の民営化や競争導入が国際的な潮流となっていることと不可分である。さらに東西ドイツの統一やソ連の崩壊という東西の緊張緩和も、軍事産業から通信インフラへと資金の流れを変えた。また、軍事技術の民生化も情報通信に大いに貢献しており、米国国防総省が順次開放してきたインターネットや衛星ナビゲーションシステムには、通信サービスの新たな可能性が期待されている。このような世界的な通信事業の活性化によって、保護された国内産業だった通信事業は国際競争の場に引き出され、メガコンペティションと呼ばれる大競争時代に突入している。光ファイバーや衛星通信などの高速で広帯域な通信網が家庭まで行き渡れば、電話もパソコンもテレビもファックスも同時に、そして家庭にいても歩きながらでも双方向で利用できるマルチメディア時代となる。