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(昭和60年度〜平成3年度)
第4節 国際社会におけるわが国の責任と役割の増大
3.人材育成と女性の地位向上への協力 ヤング・リーダー奨学基金の策定
近年、交通機関・情報通信手段の急速な発展に伴い、世界各国の結びつきは一層強まり、商品・資本の移動や人物交流が一段と盛んになってきた。しかし、この過程において国家間の摩擦・軋轢がさまざまな形で生じてきた。たとえば、各国の経済・貿易上の利害対立が強まり、世界経済の重要な成長基盤である自由貿易体制自体も、各国の協調と不断の努力なくしては維持できない状況となった。
このことは、世界の国々が政府間の関係のみならず、個人間においても一層の相互理解を深めることがますます重要となってきたことを物語っている。わが国と欧米諸国間で惹起されている経済・貿易摩擦の問題も、相互理解の不足による認識のギャップがその要因をなしているとの指摘もある。
21世紀を目前に控えた今日、国際社会には、貿易・経済にとどまらず、環境・公害、食糧・飢餓、民族・宗教、人権等さまざまな難問が山積している。これらはいずれも世界各国の協調・協力なしには解決しえないものばかりであり、その前提をなすのは、特に若い世代を中心とした国際的ネットワークの拡大である。
こうしたなかで、世界第2の経済大国であるわが国の果たすべき役割は格段に強まっており、国際社会における立場を自覚して、長期的視野に立って国際協調を重んじ、国際秩序を支える重要な担い手としての責任と役割を果たすことが強く求められているといえる。
21世紀の世界を担う新しい世代が、人類の歴史的遺産を引き継ぎ、豊かな未来を実現しうるか否かという重要な時期にさしかかっているいま、わが国はこれにいかに貢献していくかを真剣に考え、責任ある国家への転換を図るべき歴史的な時期を迎えている。-本会は以上のような認識のもとに、今後ますます増大する多国間の相互理解の必要性を勘案し、民間団体としての役割と限られた財源内での効果的・効率的な事業実施を念頭におき、特に若くて有能であり、将来国際社会のリーダーとしての活躍が期待される人材の育成を目的とした「笹川ヤング・リーダー奨学基金制度」を昭和62年度に策定した。
この制度は広く世界を対象として、昭和62年からの5年間にわが国を除く世界中から50校を選定し、各大学にそれぞれ100万ドル(基金総額5,000万ドル)の奨学基金を寄贈、通常の大学課程を終えた後、さらに高度な研究をつづける修士課程および博士課程の学生のなかから、特に優秀な者を選考して、奨学金を給付しようとする内容である。
これは、世界平和と全人類の幸福は次代を担う若い世代の双肩にかかっており、彼らの情熱と努力を奨励することが最も重要であるとの、本会の信念に基づき制定された。
本会はこのプロジェクトを、海外協力援助事業の柱として5年間にわたり推進し、将来的には本制度によって育成されたヤング・リーダーのネットワークを、全世界に広げていきたいと考えている。
<奨学金の概要>
(1)世界中の人文・社会科学分野の修士課程・博士課程に学び、かつ国際社会において将来の指導者となりうる学生に対し財政的な援助を行う。
(2)選択対象のプログラムは、国際的・学際的であることを基準とし、同プログラムで学ぶ大学院生に対し、奨学金および研究助成費を支給する。特別な場合は、大学当局との協議のうえ、これら奨学生の生活費まで含む場合がある。
(3)本会が本基金の設置を決定した大学に対し、基金設置のための基本財産として100万ドルを寄贈する。当該大学は、本基金を安全な方法で、かつ主要通貨により運用し、その運用益を奨学金・研究助成の財源とする。

笹川ヤング・リーダー奨学基金が設置されている大学〈1992年4月現在〉
・アンカラ大学(トルコ)
・マッセイ大学(ニュージーランド)
・パリ国立音学院(フランス)
・コペンハーゲン大学(デンマーク)
・フレッチャー法律・外交大学院(アメリカ)
・コロンビア大学(アメリカ)
・高麗大学(韓国)
・オレゴン州高等教育庁(アメリカ)
・ウプサラ大学(スウェーデン)
・南太平洋大学(フィジー)
・カリフォルニア大学サンディエゴ校(アメリカ)
・サンパウロ大学(ブラジル)
・ベオグラード大学(ユーゴスラビア)
・テキサス大学オースティン校(アメリカ)
・ナイロビ大学(ケニア)
・ハワード大学(アメリカ)
・サセックス大学(イギリス)
・オーストラリア経営大学院(オーストラリア)
・ヨーロッパ経営大学院(フランス)
・オスロ大学(ノルウェー)
・ヘルシンキ大学(フィンランド)
・国際問題研究大学院(スイス)
・南京大学(中国)
・ヨーク大学(カナダ)
・吉林大学(中国)
・ベンダリオン大学(イスラエル)
・蘭州大学(中国)
・プリンストン大学(アメリカ)
・復旦大学(中国)
・カリフォルニア大学バークレー校(アメリカ)
・ヤゲロニアン大学(ポーランド)
・イエール大学(アメリカ)
・エル・コレジオ・デ・メヒコ(メキシコ)
・ハンガリー科学アカデミー(ハンガリー)
・デウスト大学(スペイン)
・ペドロ・アルペ社会研究センター(イタリア)
・北京大学(中国)
・ソフィア大学(ブルガリア)
・ライプチヒ大学(ドイツ)
・ミシガン大学(アメリカ)
・チェンマイ大学(タイ)
・インドネシア大学(インドネシア)
・マラヤ大学(マレーシア)
・管理運営開発大学院(モンゴル)

ヤング・リーダー奨学基金設置第1号となった
フレッチャー法律・外交大学院(アメリカ)



ヤゲロニアン大学(ポーランド)での
ヤング・リーダー奨学基金設置に関する協定書調印式





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