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(昭和60年度〜平成3年度)
第1節 夢のある造船業へ
2.船員制度近代化に伴う「運航技術の調査研究」 
昭和30年代までの外航船では、甲板部、機関部、通信部、事務部と各部門が独立して作業しており、40人から50人の人手を必要としていた。このような船内業務は、技術革新によって逐次自動化され、44年には機関室に船員の当直を必要としないMゼロ船が開発され、59年にはMゼロ船がわが国の外航商船隊のほぼ半分を占めるまでになった。船舶の技術革新はひとり機関部のみにとどまらず、船内のあらゆる部門にまで及び、船内設備の自動化・操作の容易化に伴い、船舶における省人化がすすんだ。
一方、経済の発展に伴い、40年代前半にかけて船舶の大量建造が行われ、船員需給が逼迫し、船員不足が表面化したが、40年代後半に入ると、円高傾向と相まって船員費を中心とする運航コストが、開発途上国の船員が乗り込む外国船に比べて割高となり、わが国外航海運業の国際競争力が低下をきたすようになった。船員コストの上昇は、外航海運業の外国用船への依存傾向を強め、商船隊に占める外国用船の割合を増大し、45年の隻数23%、総トン数25%に対して、55年には隻数にして53%、総トン数にして48%と大幅に増加させた。これに対応してわが国の商船隊に雇用される日本人船員も減少し、45年には約5万6,000人であったものが、55年には約3万8,000人へと減少したのである。
一方、技術革新による船内業務と経済情勢の変化に対処するため、また雇用面で日本人船員の職域を確保し、日本人船員による船舶の運航を確保する必要性からも、船員制度の近代化が各方面で論議されるようになった。
運輸省では、52年4月、船員制度近代化調査委員会を設置し、船内業務の実態に関する実船調査、海外における船員制度の調査を実施し、新しい船員制度の検討のための基礎資料の収集を行った。54年4月、この調査委員会を発展的に解消して船員制度近代化委員会を設置し、これらの基礎資料を基に新しい船員制度の検討を推進し、55年には「仮説的船員像」を策定した。
このようにして船員制度の近代化がすすめられるなかにあって、(財)日本海技協会は、「技術革新における船舶運航の近代化に伴い、船舶の運航に従事する者は、その職務を執行するにあたり、諸般の事情に精通し、適時適切に職務を処理してその実効をあげる必要がある」として、59年委員会を設けて、「運航技術の調査研究」、すなわち、船員制度近代化のための実船実験、船内整備機器の発展に対応した運航技術の開発、船員の教育等についての調査研究を行うほか、運航する船舶における船内生活環境に関する調査研究に着手、これによって海難を未然に防止し、船舶の安全と運航能率の向上に資することにした。
この調査研究は、55年度までの5か年計画で実施された「船舶の総合支援体制」の研究成果を基に、船舶の支援システムの詳細設計について検討するとともに、甲板部、機関部について、タンカーでは出港準備作業、出港作業、港内操船、狭水道通航、入港作業等、コンテナ船では荷役関連作業、停泊作業、出港準備作業、出港作業、入港作業等の職務内容の変動などについて、コンピュータで再検討し、シミュレーションを実施、大きな成果を得た。
本会は船員制度の近代化がすすめられている状況のなかにあって、船舶技術の開発などに対応した運航技術の重要性にかんがみ、(財)日本海技協会に補助金を交付して、本調査研究事業を支援し、船員制度の近代化に貢献した。
 船員制度近代化のための総合実験の経緯

  参考:在来船乗組状況
      船長、機関長、機関士 3人
      航海士 3人、 通信士 2人
      部員 10人、  事務部4人
              計 24人
      

 近代化船「わしんとんはいうえい」(上)と
 集中制御・監視装備を備えた船橋


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