燃料電池は19世紀からアイデアがあったが、はじめて使用されたのは、1965年(昭和40年)のアポロ宇宙船の電源としてであった。その後1967年、アメリカのユナイテッド・テクノロジー社(現、IFC社)が中心となって、世界で初めて商業用燃料電池を開発した。わが国においては、昭和56年に東京電力(株)がIFC社製の出力4,500kWのリン酸型の大型燃料電池を発電テストプラントに導入して、6年間にわたって実証運転をした。国産の燃料電池は、東京電力(株)・三洋電機(株)が62年に開発しており、実証運転を行っている。 燃料電池には、イオンを運ぶ電解質の違いによって、アルカリ型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型があるが、61年にはアメリカにおいて電流密度が3倍も大きい新型が開発されており、実用化の時期が近い。燃料電池は、熱効率が高い、可動部分がないため静粛性・取扱い性に優れている、排気ガスがクリーンで環境特性がよい、配置上の自由度が高い、等といった特長を有していることから、舶用推進機関のエネルギー源として期待されるようになった。 そこで(財)シップ・アンド・オーシャン財団は、平成2年度から2年計画で「燃料電池推進船に関する調査研究」事業を実施している。 本会は、総合エネルギー効率が高く、大気汚染の心配のないクリーンなエネルギーを燃料源とする燃料電池推進船に関する調査研究に補助金を交付して、同事業を支援している。 同事業では燃料電池の開発動向調査としてアメリカ、ドイツ等を訪問して、海外の燃料電池推進船開発の事例調査を行うとともに、国内外の各種燃料電池の開発動向を調査した。さらに舶用に適した燃料電池の種類および燃料電池推進に適した船の検討を行い、燃料電池適用船種として、快適性向上、部分負荷特性向上がのぞめ、排気ガス規制などの社会的要請面でも有利なフェリーや客船、経済性の面で有利なLNG船、低振動、低騒音性能でディーゼル機関によるものより格段に有利な調査観測船、空気を使用せずにバッテリーによるものより長時間潜水できる潜水船などが将来有望であることを明らかにした。また舶用燃料電池推進システムについても検討した。 これにより、燃料電池を舶用推進機関として利用するうえでの技術的諸問題および燃料電池推進船実用化時代に向けての技術的開発課題を明らかにすることができ、その成果は、次の開発に大いに役立つものである。 |
燃料電池推進システム
在来熱機関推進システム(ディーゼル機関)
燃料電池推進LNG船の予想図。排気ガスが クリーンなので、大型の煙突が不要 |