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(昭和60年度〜平成3年度)
第1節 夢のある造船業へ
1.先端技術の研究開発 造船CIMSパイロットモデルの開発研究
昭和60年度に入って、わが国の経済は、内需を中心とした景気の拡大により、平成にかけで“いざなぎ景気”に次ぐ大型好況をつづけた。このなかにあって、造船不況から立ち直り、経営の活性化を図ることによって安定化へ移行しつつあった造船業が、21世紀に向けてより強化された生産体制を確立し、国際競争力の維持と、世界の海運界への優秀な船舶の供給をつづけていくためには、産業自体のもつ労働集約的な体質を、魅力ある近代化された体質に変革することが必要であった。
このための施策はいろいろと論議にのぼったが、そのなかで特に重要な施策として、造船CIMSの導入が強く要望されるようになった。
CIMSとは、Computer Integrated Manufacturing Systemsの頭文字をとった略称で、受注から引渡しに至るすべての企業活動の計画・実行・管理に関する情報を、コンピュータネットワークで統合し、必要な質と量の情報をタイムリーに得ることのできる仕組みを提供することにより、無駄を省き、企業活動の生産性を向上するシステムである。このシステムが完成し機能しはじめれば、今後ますます多様化することが予想される、造船に関する各種の業務に必要な情報を、必要なときに必要な量だけ必要なところへ流すことができる新しい体制が確立されることになる。
これによって、高度技術および高付加価値船の開発、設計・生産技術の高度化、また、高齢化・人手不足・脱熟練化などへの対応が容易にできるようになる。
具体的にいうと、1)船主ニーズおよび市場動向への機敏な対応、2)各種性能、工程計画などのコンピュータモデルを用いたシミュレーションによる最適化設計に対する支援、3)船舶の設計・建造に関する手順・知識・標準などのシステムへの組み込みによる技術の蓄積・伝承、4)設計の専門家および現場熟練者の判断を必要としないわかりやすい作業指示の拡大、5)設備の近代化・自動化の推進の円滑な対応、等が期待されるようになる。
このシステムの実現のためには、最先端のコンピュータ利用技術を存分に駆使する必要があり、昭和62年度から63年度に本会補助事業で行われた(社)日本造船研究協会での「新世代における造船の設計・建造および保全技術に関する調査研究」においても、造船CIMSの開発に際しては、本格的開発に先立ってパイロットモデルの先行開発を行い、各種要素技術の徹底的な検証を行うことが有効であるとの提案がなされていた。
このような背景を考慮して(財)日本造船振興財団(現、(財)シップ・アンド・オーシャン財団)は、平成元年度から3か年にわたって本格的な造船CIMSに向けて、まずパイロットモデル、すなわちプロダクトモデル、データベースシステム、全体コントロールシステム、主要目・区画配置および仕様設定システム、構造配置・寸法決定支援システム、配管配置・寸法決定支援システム、工作要領決定支援システム、日程計画支援システム、工程管理システムを開発し、そこで技術的検討課題の検証や本格的システムの開発規模の推定などを行うこととした。同事業は現在進行中である。
本会は21世紀に向けて、わが国造船業の国際的地位をふまえ、造船業の近代化事業の一環として、同財団の「造船CIMSパイロットモデルの開発研究」に補助金を交付して、支援を行っている。

8万トンタンカーの船体構造
 モデルの例


開発環境設備の配置室 



 パイロットモデル全体構造図

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