1980年(昭和55年)5月8日、スイスのジュネーブで開かれたWHO第33回総会において、人類にとって輝かしい一つの勝利が記録された。過去数千年にわたって人類を悩ましてきた天然痘を、ついに地球上から追放しえたという「天然痘撲滅宣言」である。 WHOは1976年以降、天然痘撲滅対策を推し進めた結果、1967年に患者常在国が33か国であったものが、1977年10月に最後の天然痘患者がソマリアで発見されて以来、30か月にわたって患者の新発見がなかったことから、専門委員会におけるさまざまな検討を経て、この総会において地上から天然痘が根絶された旨を全世界に向かって宣言した。 この総会には、笹川良一会長がマーラーWHO事務局長から特別に招待され、各国政府代表に混じってただ一人民間人として列席した。総会に先立ち催された笹川会長の歓迎昼食会の席上、マーラー事務局長は「天然痘撲滅宣言という輝かしい日を迎えることができたのはまことに喜ばしい。特に日本船舶振興会の協力と笹川会長のリーダーシップは、天然痘の撲滅に希望を与える大きな光であった。日本船舶振興会の援助は、天然痘の撲滅に最も必要な時期にタイミングよくなされ、まことに効果的であった」と謝辞を述べた。 ちなみに、WHOの天然痘撲滅事業に対する本会の援助は、昭和50〜54年度の5年間で総計286万1,880ドル(当時の邦貨換算で6億8,680万円)にのぼり、世界の民間団体による協力援助としては最高を記録した。 一方、WHOは1977年の総会で当面の最優先目標として、「西暦2000年までにすべての人に健康を」を打ち出し、全人類の健康事業を立案した。この事業は免疫拡大、失明予防対策ならびに地域医療体制の充実による疾病予防を目的としたプライマリー・ヘルスケアの3事業からなり、従来から力を入れてきたらい病根絶対策等とあわせ1981年から強力に推進された。世界中のあらゆる地域のすべての人々が、近代医学の恩恵に浴し、最高水準の健康を維持することを願って、本会はこれらWHOの事業を積極的に支援協力した。 |
「天然痘根絶」宣言を報じる新聞 (連合新報、昭和55年6月1日付) |