日本財団 図書館
 
Top日本財団三十年の歩み 本史>本史詳細
(昭和55年度〜59年度)
第3節 魅力ある地域づくり
3.きめ細かな福祉援助活動 がん撲滅対策
現在、世界でがん患者は毎年800万人発生し、500万人が死亡しているといわれる。わが国では昭和20年代後半から、がん・心臓病・脳卒中の3大成人病が増加し、56年以降、がんが脳卒中にかわり死因の第1位となった。平成元年度における総死亡者約79万人中、3大成人病の死亡者は62%(約49万人)に達した。またがんの死亡者は27%(約21万人)を占めている。
本会は昭和42年度から(財)癌研究会に対し、毎年、研究費とあわせ最先端医療診断機器の整備に補助を行うなど(第1章第4節の「がん対策支援」参照)、早くからがん撲滅に取り組んできた。
こうしたなかで昭和58年3月、政府はがん対策の効果的・総合的な推進を図るため「対がん10か年総合戦略」を策定した。これは10年をめどに6つの重点研究課題を設定し、内外の英知を結集してその究明に取り組み、その成果を予防・診断・治療に反映させ、全世界のがんに苦しむ人々のために役立てようとするものであった。
プロジェクト研究を円滑にすすめるため、国立がんセンターなどの機能の充実、リサーチ・レジデント制度による若手研究者の育成・活用、リサーチ・リソース・バンク(細胞・遺伝子銀行)の運営、国際シンポジウム、レクチャーシップの開催等の事業が実施されることとなった。
この大事業を成功させるには官・学・民をあげて取り組む必要があり、本会はその支援策の一つとして、質の高い細胞・遺伝子の安定供給体制を確立するため、59年度から(財)がん研究振興財団に資金補助を行い、わが国初の細胞・遺伝子銀行の設立と運営に協力している。
また、本会は「対がん10か年総合戦略」への支援と並行して、がんの医療・研究に実績のある海外の各種団体の活動を支援している。
55年度に分子矯正医学の実践的研究で有名なアメリカのライナス・ポーリング科学医学研究所の行った「がんとビタミンCに関する栄養学的立場からの研究」に対し、また、57年度にはスウェーデンのカロリンスカ研究所を中心としたスウェーデン・日本共同の泌尿器がん研究プロジェクトに対し援助金を支出した。人口構造の高齢化が急速にすすむ折から、泌尿器がんの研究は関係者の注目と期待を集めた。

 リサーチ・リソース・バンクの 
 シンポジウム




 多段階がんモデル
(正常細胞からがん細胞へ)

日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION
 
The Nippon Foundation