日本財団 図書館


*印象その3
 日本人は真面目で、細かいところも重視し、仕事熱心で、仕事はストレスのかかるものが多く、残業も普通にこなしています。
 東京に着いた時、成田空港から宿泊先がある池袋に車で移動していると、夜が近づき、空も暗くなってきているのに、鉄筋コンクリートのジャングルのような高層ビルの間を通ると、大きなガラス窓のオフィスが沢山くっきりと見えました。定時はとっくに過ぎているのに、中は依然として明かりが点いており、忙しそうでした。それがどこも残業中のためだと知って驚きました。日本のサラリーマンの多くは年がら年中こんな感じのようで、それから数日間もこういう壮観な眺めが見られました。本当にすごい眺めです。効率については言うまでもありませんが、仕事のストレスが感じられ、もしや・・・と思いました。日本は国土が狭く資源も少ないので、人的資源に頼るしかなく、熱心に仕事に精を出さなければならないのでしょうか。残業までして、ようやく発展に不足している条件を補うことができ、経済大国にまでなったのでしょうか。
 それから数日間の参観でも、日本人が非常に真面目で細かいというところを見つけました。参観先に着いて車を降りる時間になる度、高々1〜2時間なのに、受け入れ側のスケジュールが詳細に2〜3枚の紙にプリントアウトされていて、受け入れ側の担当者の分担明細がきれいに分かり、それが真面目に細かく考慮されレイアウトされたものであることを窺うことができました。私たちに車を出してくれたドライバーも、年上に見える人もいたのですが、ひどく重い何十個ものスーツケースを順番にトランクへ出し入れしてくれました。職責のあるところは責任を持つという仕事熱心さは賞賛したくなります。
 特筆に値するのは、田中功先生のことです。もともと「日本の大学図書館の現状」というテーマで講義をしてくれる予定だった田中先生は早くから資料の準備をしていたのですが、私たちが日本に着いてから彼といろいろ話しているうち、内容を補充する必要が出てきました。二日目には使う必要があり、時間は迫っているなかで、田中先生はその晩に残業までして紹介資料を更新してくれたのです。予想外のことが重なって二日目の田中先生の講義を受けることはできなくなってしまったのですが、彼が残業までして資料を用意してくれたことを知り、とても感動しました。田中先生の姿勢から、日本人の真面目さと責任感の強さ、仕事熱心な態度が見て取れました。
 
*印象その4
 数日間の訪問による触れ合いで時々感じたのは、日本人がとても礼儀を重んじるということです。人とはいつも品よく礼儀正しく接し、控えめに自分を抑えており、辺りを憚らない態度はほとんど見られませんでした。
 私たちが目的地を訪問する度、どこでもホストは礼儀正しく親切に受け入れてくれました。送り迎えをするときの優しい笑顔と周到な手配はとても深く印象に残っています。日本訪問中、温かく受け入れられていた原因は、ただ単に私たちの身分が訪問客だというだけではありません。買い物をする商店内でも、滞在先のホテルのエレベータでも、大学のキャンパス、図書館の中などでも、日本人は人と会うと頭を下げていました。私たちの出会った日本人は、誰もが上品で礼儀正しく、素晴らしいと感じました。日本社会では、常日頃こんなにも人々が互いを尊重しあい、礼儀正しく付き合っているのですね。
 
*印象その5
 日本の料理も、とても特徴的でした。
 日本に行く前に日本料理について聞いていたこととは、味が薄くて量が少なく、魚や牛の肉を生で食べるが、独特な風味であるというものでした。日本で試してみると、実際はとても良い感じでした。
 日本料理そのものは薄味で、油物も多くありません。しかし、調味料や醤油は少なからず使われており、適切な味付けでした。食べ物のボリュームも見た感じでは多くありませんでしたが、一通り食べるとだいたい満腹になりました。しかも、栄養のバランスがとれており、牛肉と刺身は生で食べましたが、想像したような生臭さはなく、調味料をつけると、素晴らしい風味でした。食事は基本的に一人一膳ずつに分けられていますが、こうした習慣は衛生、食べ物と食器との色調の取り合わせ、造詣や置き方にまで気が配られていることによるものです。普通の弁当でさえ、かなり緻密に盛り付けられていました。
 正式な日本料理には更にこだわりがあるそうですが、日本料理はとても特徴的で、名声も人気もかなりのものがあります。
 
*印象その6
 日本にいる期間中、五箇所の図書館を割と詳しく参観し、理解することができました。そのうちの四箇所は大学図書館です。各館それぞれに特色があり、私たちは今回の訪問で最も長い時間を費やしました。参観して理解した全体的な感覚をまとめると、中国国内の図書館とあまり一致しないところが六点ありました。
(1)各図書館は特色ある建物づくりを重視しており、ここへの投資や尽力は少なくなかったことが見て取れました。
(2)各館とも読者サービスを重視しており、人を基本とする姿勢を重んじていました。多くの面でひとりひとりの利用者が便利に快適に効率的に館内機能や施設を使えるよう考慮されており、使い易いものでした。
(3)ほとんどの図書館は建物と内装、機能配置がどれも特徴的で、整っていて美しく、巧妙な中に異なる芸術的風格を醸し出しており、図書館を従来の伝統が刻まれた板のような単一さから耳目一新し、多くの面で賞賛と参考に値すると思います。
(4)現代科学の手法や設備を導入し応用することにより、図書館がより良く機能し業務効率も高くなっていました。
(5)各館の図書館員は多くないものの分業が明確で、それぞれ担当職務があり、仕事熱心なようでした。利用者も協力的で自発的に規則を守り、正しく蔵書や施設を利用していました。
(6)機能を拡張している図書館が一部ありました。例えば、多目的会議室、学内の教員や学生のためのディスカッションルーム、学内の作品の陳列ロビー(室)など。
 
 まとめると、図書館の同業者として参観して感じたのは、多くの方面や細かいところが考慮や参考に値するということでした。今後の自身の仕事に関して、考え方の指針になると思います。
 ここまで、思いつくままに取りとめも無く数点の印象を書き連ねてきました。
 今回の日本訪問は慌しく、限られた時間と選択の中、あまり多くの都市を歩くことはできませんでした。残った印象も完全に細かく述べることはできませんが、例えば、江戸時代の大阪城天守閣。風景も環境も優美で静かな古刹。寒い早朝にランドセルを背負って、朝日を迎えながら半ズボンの制服で登校する小学生。京都に行くと、それまでアニメでしか見られなかった「一休さん」、「ドラえもん」が、日本の風格を色濃く漂わせる古民家や路地が身近にありました。東京湾の美しい夜景、ネオンライト。沖縄の水族館の巨大で透明なガラスのアクアルーム。恩納村の果てしなく広く魅惑的な海岸、海風、波浪、砂浜。これらが深く記憶に残り、とても忘れがたいものになっています。
 もちろん、日本には、私のこうした視線だけでなく、私たちの意に沿わないところも少なからずあったでしょうが、特に気がつかなかっただけだと思います。
 結論として、限られた時間で日本を見尽くすのは望むべくもなく、見抜くことも無理でしょうが、見れば印象はありますし、見るということは知るということ、ものを知るなどということは、だいたいこうした印象から始まるものでしょう。
 2007年3月か4月の桜の咲く季節に、中国中央電視台が日本に取材班を派遣し、『岩松看日本』という特集番組を作るそうです。私も早く見られることを期待しています。この番組で日本に注目し、より良く日本を理解したいと思っています。
 
 この場をお借りして、大変な業務にあたっている日本科学協会の図書プロジェクト室担当者各位に深く感謝を申し上げます。私たちの訪問を受け入れてくださった関係者各位、本当にありがとうございました。
2006.12.26


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