日本財団 図書館


5. 地域別実績
ヨーロッパ−北部と南部の旅行目的地諸国で成長を維持
 ヨーロッパ域内の主要送客市場のいくつかにおいては、経済状況が芳しくないため観光産業の成長に資するところが少なかったが、それでも国際観光客到着数は、実質的に前年の伸びに匹敵する4%の増加となった。小地域区分では、北ヨーロッパと南・地中海ヨーロッパが各々約7%と6%の成長を見せた。西ヨーロッパおよび中央・東ヨーロッパの伸びはずっと小さく、約2%であった。
 北ヨーロッパが2年連続して平均をはるかに上回る好調を見せたのは、イギリス(8%増)の力強い業績に因るところが大きい。2005年7月のロンドン同時爆破テロにもかかわらず、イギリスの国際旅行客到着数の伸びは年間を通して前年比プラスを維持した。約6%伸びを見せたアイルランドは、アメリカ合衆国と日本からの到着者数減少に苦しんだが、ヨーロッパ内からの旅行客によって穴埋めされた。
 南・地中海ヨーロッパの実績は、トルコ(21%増)の好調とスペイン(6%増)の堅調な業績に負うところが大さい。スペインは、国内の多種多様な知名度の低いアトラクションにスポットを当てた新商品を開発して、市場の多様化に成功している。
 2005年、西ヨーロッパ全体の実績は平均値を下回ったが、これは当該小地域区分の到着者数の半分強を占めるフランス(1%増)の業績低迷に起因する。成長率がトップであったのはドイツで、到着者数は7%増であった。中央・東ヨーロッパの伸びは2004年の10%から2005年は2%へと著しく低下したが、2004年の伸びは、ヨーロッパ連合(EU)が新加盟国10ヶ国に門戸を開き、そのうち7ケ国がこの小地域区分に属していることに起因するものであったということを考慮すると、納得できる数値である。中央・東ヨーロッパの観光サクセス・ストーリーには、低コスト航空会社が一役買っている。2005年の花形役者はベラルーシ(35%増)であったが、エストニア(9%増)、スロバキア(8%増)、ポーランド(6%増)など、それ以外の多くの国も平均以上の伸びを達成した。
 
(拡大画面:226KB)
出典:世界観光機関(UNWTO)
(UNWTOが2006年までに収集したデータ)
 
アジア・太平洋地域−成長を続ける巨人
 アジア・太平洋地域は、2004年のSARS後の驚異的な回複(27%増)に続き、2005年も平均8%という力強い成長を記録した。2005年の結果は、前年に大躍進を果たした直後の成長であるという点だけでなく、当該地域が2004年12月のインド洋津波と海底地震による被災からいまだ完全には回復していないという点から見ても、重みのある数値である。津波と地震はモルジブの観光を直撃し、その他のスリランカ、タイ、インドネシアなどの目的地国にも深刻な影響を与えた。そのせいで確かに成長は足止めされたが、それでも南アジア・東南アジアともに5%の成長を見せた。2005年最も成長した小地域区分は北東アジアで、前年比10%増。オセアニアの到着者数の成長率はやや緩かな4%増だった。
 2004年12月の津波の悲劇に見舞われた国の中では、モルジブが、2005年後半の数ヶ月は下がり止まりを見せたというものの、前年比39%減という結果に終った。インドネシアの到着者数は6%減し、スリランカも3%減となった。タイでは月次の数字が6月以降プラスに転じ、通年の減少は1.4%に留まった。その他の東南アジア・南アジアの旅行目的地国においては、メコン流域国のラオス(65%増)、カンボジア(35%増)、ベトナム(18%増)、フィリピン(15%増)、インド(13%増)など、著しい成長を記録した。
 北東アジア(10%増)はいまや、台湾(中国)(15%増)、中国(12%増)、日本(10%増)という最強の役者を擁する最も成長する小地域区分として名を馳せつつある。香港(中国)、マカオ(中国)(共に8%増)ともに、2005年は、低コスト航空会社のサービスの利用拡大と中国本土からの旅行自由化が続いたことによって大きく伸びた地域内需要からの恩恵を受けた。
 オセアニアでは、オーストラリア・ドル高にもかかわらず、2005年のオーストラリアの観光客到着数の伸びは5%を超え、クック諸島、グアム(共に6%増)などの太平洋諸島の旅行目的地各国もほぼ同レベルに達した。しかし、最高の伸びを見せたのはパプア・ニューギニア(17%増)とフィジー(10%増)であった。
 
(拡大画面:199KB)
出典:世界観光機関(UNWTO)
(UNWTOが2006年までに収集したデータ)
 
米州−成長を続ける中央・南アメリカ
 米州では、北アメリカ(5%増)とカリブ海(4%増)が地域平均をわずかに下回ってはいるものの、前年比6%増という結果であった。主な旅行目的地国のうち、アメリカ合衆国(7%増)では、2004年の回復傾向が継続し、また、メキシコ(6%増)とキューバ(12%増)は、昨年の壊滅的なハリケーンの影響による低迷後、なお平均以上の伸びを見せた。中央アメリカ(16%増)と南アメリカ(12%増)の旅行目的地国は、大いに実績を上げた年となった。
 史上まれに見る激しいハリケーン・シーズンに悩まされたにもかかわらず、2005年のカリブ海全体の到着者数は4%増加した。全般的な成長に逆行した目的地国もいくつかあった。最も大きな成長を見せたのは、アンギラ島(15%増)、英領ヴァージン諸島(11%増)、セント・ルシア(6.5%増)などである。ドミニカ共和国の到着者数は7%と大幅に伸びたが、これはアメリカ合衆国市場でのブームに因るところが大きく、同国市場から当地への旅行客は100万人を上回った。キューバ(12%増)はラテン・アメリカ市場に加え、ヨーロッパの主要送客国や、ロシア、中国のような新興市場からの伸びも大きく、申し分のない年となった。
 中央・南アメリカを襲った自然災害も地域経済に打撃を与えはしたが、中央アメリカの観光業は、ハリケーン・スタンによる洪水から、程度の差こそはあれ、ほとんど被害を受けなかったようだ。中央アメリカの成長率は16%に達し、2005年世界で最も急成長を遂げた地域区分となった。ベリーズを除く中央アメリカの旅行目的地国は、2年連続して二桁成長を記録した。
 南アメリカ(12%増)の実績ならびに傾向も同様で、地域区分内のほとんどの国が、有利な為替レート、上質な観光商品の充実、航空輸送能力の強化、主要送客市場の経済回復などからの恩恵を受けた。好況が続く南アメリカの国々では、ビジネス旅行客や投資の増加も惹きつけている。ベネズエラ(45%増)が最強の伸びを記録し、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、パラグアイ、ベルー、スリナムの全てが、十分に好調であった2004年の実績に続き、10〜20%の伸び率を記録した。
 
(拡大画面:238KB)
出典:世界観光機関(UNWTO)
(UNWTOが2006年までに収集したデータ)


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION