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はじめに
 本報告書は、日本財団の平成18年度助成事業として実施した「マ・シ海峡の航行安全対策等の費用対効果と費用負担に関する調査」の成果をまとめたものである。
 
 マラッカ・シンガポール海峡の航行安全対策は、これまで長年にわたり、主たる利用国である日本のみが沿岸国に対し協力をおこなってきたが、中国・韓国を始めとして東・東南アジア各国の経済成長に伴って利用国の多様化してきたことに加え、将来的にも当海峡の通航量は益々大きくなることが見込まれ、将来的に持続可能な当海峡の利用を図る観点から、国連海洋法条約43条の国際協力体制の構築が急務となってきている。
 
 さらには、この2〜3年、マ・シ海峡の沿岸国と利用国その他の利害関係者が協力して安全・環境・セキュリティ対策の向上を図ろうとする動きが急速に活発化している。2005年からはIMO(国際海事機関)が沿岸国と共同で開催する一連の会議が開催されており、2006年9月のクアラ・ルンプール会議では、安全・環境対策に関する6つのプロジェクトと協力のメカニズムが沿岸国側から提案され、議論が大きな進展をみた。2007年9月には一連の会合の締めくくりとなる会議がシンガポールで開催される予定であり、この場で沿岸国と利用者との協力実現について合意がなされることが期待されている。
 
 こうした取組みはこれまで政府間の協議を中心に行われてきたが、民間レベルでも当海峡における協力をめぐる議論を行って政府レベルでの取組みを補完することを目指し、2007年3月、日本財団と沿岸三カ国の研究機関により、民間の役割、特に海峡の直接の利用者である海運業界の役割について検討することをねらいとして、「マラッカ・シンガポール海峡における航行安全と環境保全の向上に関するシンポジウム」が開催された。
 
 本事業では、当シンポジウムにおいて、具体的な協力メカニズム等について提案を行うため、当海峡において必要となる施設整備・プロジェクト案の費用便益分析等についての調査を行った。本調査事業及び当シンポジウムの成果により、2007年9月に開催予定のIMOシンガポール会議に向けて、当海峡に係る国際協力体制の構築に向けての国際的議論が一層高まることを期待している。
 
 なお、本調査の実施に当たっては、国土交通省海事局、日本財団、マラッカ海峡協議会、海洋政策研究財団、日本海難防止協会、日本船長協会等の方々から適切なご意見を賜ったところであり、ここに厚く感謝の意を表する次第である。
 
平成19年5月
財団法人 運輸政策研究機構
会長 寺嶋 潔
 
「マ・シ海峡の航行安全対策等の費用対効果と費用負担に関する調査 委員会」委員名簿
(敬称略・順不同)
座長 羽生 次郎 (財)運輸政策研究機構 国際問題研究所所長
委員 長光 正純 日本財団 常務理事
〃 海野 光行 日本財団 海洋グループ海洋安全チームリーダー
〃 寺島 紘士 (財)海洋政策研究財団 常務理事
〃 小谷 哲男 (財)海洋政策研究財団 政策研究グループ研究員
〃 金子 史生 (財)マラッカ海峡協議会 専務理事
〃 山越 國利 (財)マラッカ海峡協議会 事務局長
〃 徳野 勤  (社)日本海難防止協会 専務理事
〃 増田 正司 (社)日本海難防止協会 企画国際部長
〃 河野 優  (社)日本海難防止協会 国際室長
〃 市岡 卓  (社)日本海難防止協会 シンガポール連絡事務所所長
〃 森本 靖之 (社)日本船長協会 会長
〃 古屋 隆行 (社)日本船長協会 常務理事
〃 永松 健次 国土交通省 海事局外航課長
〃 山下 幸男 国土交通省 海事局総務課国際業務調整官
〃 高野 昌浩 国土交通省 海事局外航課専門官
 
事務局 伊崎 朋康 (財)運輸政策研究機構 調査室・国際問題研究所主任調査役
作業協力 生田 陽一 (株)エム・オー・マリンコンサルティング 海洋技術部首席研究員
 
「マ・シ海峡の航行安全対策等の費用対効果と費用負担に関する調査 ワーキンググループ」委員名簿
(敬称略・順不同)
委員 海野 光行 日本財団 海洋グループ海洋安全チームリーダー
〃 小谷 哲男 (財)海洋政策研究財団 政策研究グループ研究員
〃 山越 國利 (財)マラッカ海峡協議会 事務局長
〃 河野 優  (社)日本海難防止協会 国際室長
〃 古屋 隆行 (社)日本船長協会 常務理事
〃 山下 幸男 国土交通省 海事局総務課国際業務調整官
〃 高野 昌浩 国土交通省 海事局外航課専門官
 
事務局 伊崎 朋康 (財)運輸政策研究機構 調査室・国際問題研究所主任調査役
作業協力 生田 陽一 (株)エム・オー・マリンコンサルティング 海洋技術部首席研究員


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