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大航海時代の平戸と女性たち展 解説書
2006.07
○本書は松浦史料博物館が開催する企画展「大航海時代の平戸と女性たち展」(会期:平成18年7月1日〜9月30日)の解説書として作成したものです。
○掲載している資料は、展示資料の中から主なものを選んで掲載しています。
○本企画展は日本財団助成事業です。
 
第1章 代表的資料写真とその解説
地球儀(ちきゅうぎ)
 
1700年 オランダ ファルク工房
総高 46.3cm 球径 31.0cm 松浦史料博物館蔵
 
 平戸藩9代藩主、松浦 清(まつら きよし)(静山(せいざん):1760-1841)が入手したもの。1641年に平戸オランダ商館は、長崎の出島に移転した。松浦清(静山)は、平戸にオランダ商館が存在したことを十分に意識しており、積極的にオランダ関係資料を購入等している。1782年には、平戸でひきあげられたオランダ船の錨について、出島のオランダ商館長ティチング(1745-1812)に証明書を発行してもらっている。
 
天球儀(てんきゅうぎ)
 
1700年 オランダ ファルク工房
総高 46.3cm 球径 31.0cm 松浦史料博物館蔵
 
 地球儀と同じく、松浦清(静山)により入手したもの。地球儀、天球儀ともに、オランダ・アムステルダムのファルク父子により製作された。現在、世界中で確認されるファルク製、地球儀・天球儀の中で、掲載のいずれともに状態が良いものとされる。子午線最上部に製造番号があり、地球儀が7で、天球儀が8と刻銘されている。
 
松浦信実夫妻像(まつらのぶざねふさいぞう)
 
平戸城下・印山寺旧蔵、江戸時代後期平戸藩絵師、片山舟水の写
87.0cm×60.4cm 紙本着色 松浦史料博物館蔵
 
 松浦信実(?-1621)は、平戸藩初代藩主、松浦鎮信(法印・1549-1614)の弟である。
 天正年間には、豊臣秀吉のもとに人質として赴いている。信実の晩年には、平戸にイギリス商館が開設(1613-1623)されていた。信実は『イギリス商館長日記』に、他の有力者と違い、イギリス商館員と良好な関係にある表現がされている。また、『イギリス商館長日記』の1621年9月24日部分には信実の平戸における葬儀の詳細が記されている。
 本肖像は、松浦一族の中で現存する唯一の夫妻像である。
 
松東院像(しょうとういんぞう)
 
寛永12年(1635) 狩野安信(かのうやすのぶ)筆 江月宗玩(こうげつそうがん)賛
93.5cm×38.2cm 絹本着色 松浦史料博物館蔵
 
 松東院(1571?-1656)は、平戸藩3代藩主松浦隆信(まつらたかのぶ)(宗陽)の母である。日本最初のキリシタン大名大村純忠(おおむらすみただ)の五女である。松東院もキリスト教徒で、洗礼名をメンシアという。キリスト教禁制となる中、息子隆信が幼少時に洗礼を受けさせるなどした。しかし、寛永7年(1630)、江戸の広徳寺に蟄居(ちっきょ)となり、そこで没した。江戸広徳寺には多くの召使いがしたがったと記録されている。この肖像は「正宗院(しょうじゅういん)像」「清浄院(せいじょういん)」との三幅対(さんぷくつい)となっている。中橋狩野家の祖である狩野安信が描き、松浦隆信と親交が深く、平戸オランダ商館を訪問したこともある大徳寺住持の江月宗玩が賛を書いている。
 
正宗院像(しょうじゅういんぞう)
 
寛永12年(1635) 狩野安信筆 江月宗玩賛
93.6cm×38.5cm 絹本着色 松浦史料博物館蔵
 
 正宗院とは、平戸藩3代藩主、松浦隆信(宗陽:1591-1637)である。松浦隆信の藩主在位時に、平戸にはオランダ・イギリス両商館が開設され貿易がおこなわれた。この間、オランダとの貿易が、危機的状況(貿易中止)に追い込まれる事件(タイオワン事件)が発生した。江戸幕府内部で、オランダ側の擁護者がほとんどいなくなる中、松浦隆信・松浦家と姻戚関係にある一部の幕閣が粘り強く働きかけを行い、貿易が再開されることとなった。
 なお、松浦隆信が、本画像に賛を施した江月宗玩(こうげつそうがん)に帰依したのは寛永8年(1631)3月頃とされる。
 
清浄院像(せいじょういんぞう)
 
寛永12年(1635) 狩野安信筆 江月宗玩賛
90.0cm×37.4cm 絹本着色 松浦史料博物館蔵
 
 清浄院(コト)は、父・松浦久信(平戸藩2代藩主・1571-1602)と母・松東院(メンシア)の第二女として誕生した。生前の事跡はほとんど不明で、一族である松浦(大野)忠広の妻となり、寛永8年(1631)6月3日に江戸で没したことが判明する程度である。葬所は、母が蟄居(ちっきょ)する江戸広徳寺であった。また、平戸の水向所が、父(久信)の墓所脇にある。


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