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特集
関西の第2滑走路オープンを契機とした今後の展開
−「アジア・ゲートウェイ構想」の中核空港として−
関西国際空港株式会社
1 はじめに
 関西国際空港(関空)は、本年8月2日の第2滑走路のオープンにより、我が国初、我が国唯一のグローバルスタンダードに適った複数の長大滑走路を有する本格的24時間空港となります。
 安倍首相は、就任当初から、「アジア・ゲートウェイ構想」を提唱し、「美しい国、日本」の魅力を世界にアピールするとともに、ヒト・モノ・カネ・文化・情報の流れにおいて、日本がアジアと世界の架け橋となり、アジアなど海外の成長や活力を日本に取り込むことにより、国家の発展を目指している。その一環として、使い勝手を含めた日本の国際空港などの機能強化を早急に進めることを、所信表明演説等で明らかにしています。
 首都圏の空港の拡張や24時間化への対応は、2009年度以降となりますが、この間、アジア諸国では、新空港の建設や空港拡張を次々と実現していく計画があります。これらアジア諸国との競争に伍して、我が国をアジアのゲートウェイとして確立し、観光やビジネスでの交流、物流の拡大等を通じて、国際競争力を強化し、更なる成長を遂げていくためには、これまで以上に、スピーディかつ弾力的な対応が求められています。
 関空は、既に、アジア方面を中心に豊富な航空ネットワークを有し、本年8月には、本格的24時間空港としての機能強化が実現することから、まさに「アジア・ゲートウェイ空港」として関空を位置付け、この貴重なインフラの最大活用により、関西地域はもちろん、我が国全体の発展と国際競争力の強化を目指すことが期待されます。
 当社としても、需要動向に併せて、空港の施設整備や機能拡充を着実に進めるとともに、お客様第一主義に立って、お客様の基本ニーズである「安全・安心」「利便性」「快適性」を徹底追求し、顧客満足度ナンバーワンの空港を目指して、各種の取組みを加速させることとしています。
 以下、関空の現状と優位性、第2滑走路オープンによる新たな展開、関空の抱える課題と今後の対応等について述べることとします。
 
 
2 関空の現状と優位性、新たな展開など
(1)物流面での特色
〔1〕アジア方面を中心に国際線ネットワークが充実
 当社、地元の経済団体や地方公共団体のトップによる「オール関西」でのポートセールス、様々なプロモーション活動等の効果もあって、関空の2006年冬ダイヤの国際線ネットワークは、開港以来の最大運航便数となり、旅客便(貨客便)が週566便、貨物専用便が週167便、合計で週733便となっており、アジア方面を中心に、中東、欧米、オセアニア等、国際線ネットワークが充実しています。[図表1]
 
[図表1]◇関西空港の国際線就航便数(定期便)の推移
 
 特に、経済成長が著しく、我が国にとって最大の貿易相手国である中国との間において、旅客便(貨客便)が週201便(うち上海は週66便)、貨物専用便が週74便、合計で週275便と、我が国の空港で最も充実した中国線ネットワークとなっています。旅客便(貨客便)は関空からの直行により、中国の15都市と結ばれています。[図表2]
 
[図表2]◇関西空港の国際線就航状況(2006年冬期スケジュール)
 
 こうした豊富な航空ネットワーク、しかも、中型機による多頻度運航という特色を生かして、
(イ)リードタイムの短縮(「アジア翌日配達圏」化など)
(ロ)小口多頻度輸送による在庫圧縮
(ハ)ジャストインタイム輸送などの定時性の確保
(ニ)積替回数の最少化による輸送品質の確保
 など、多様なニーズに応えることが可能です。
 このように、関空は、グローバル経営を推進する企業の最適物流システムの構築を支える空港としての活用が期待されます。
 
〔2〕航空物流を阻害するあらゆる制約が少なくユーザーの自由度が高い
 関空は、4000m級の複数滑走路を保有する完全24時間運用の海上空港であり、騒音問題や工事による夜間乗入制限がなく、深夜・早朝便の設定など最適物流の実現に資する自由なダイヤ設定が可能です。また、4000mの滑走路により大型・長距離便のフルペイロード(満載)就航が可能です。さらに、気象条件が安定しており、欠航率が低い空港であることから、輸送の信頼性の最も高い空港です。
 関空内の税関当局も、予約なしの完全365日24時間執務体制をとっており、貨物取扱事業者の輸出入通関代理手続、輸出入上屋のハンドリング等も、24時間体制をとっています。さらに、国際貨物地区内に、24時間対応のコンビニエンスストア、従業員駐車場、従業員休憩施設等を完備しています。
 産官学の連携により設立された「国際物流戦略チーム」(本部長:秋山喜久 関西経済連合会会長)では、新たな国際物流システムの構築やボトルネックの解消に向けた取組みを本格化させていますが、関空においては、昨年8月から、関空−上海便の深夜貨物便の実験事業を実施しています。荷主企業の好評を得ており、昨年秋からは、週3便から週6便に増便されました。加えて、関空−羽田の国内貨物便も週9便に増便され、首都圏の貨物需要が「羽田−関空−中国」というルートで輸送されています。[図表3]
 
[図表3]◇国際物流戦略チーム深夜便モデル事業の概要
(拡大画面:130KB)
 
 また、関空は、災害、港湾ストライキなどの緊急時に際し、部品や製品の海外輸送のための臨時便やチャーター便の運航がいつでも可能であり、グローバル企業のリスク・マネジメントを支える空港となっています。
 このように、関空は、航空物流を阻害する時間的、物理的、その他あらゆる制約が少なく、ユーザーの自由度が最も高い空港です。
 
〔3〕航空物流拠点の大規模施設展開が可能
 関空内の1期島の国際貨物地区においては、貨物上屋など施設展開が進み、既に満杯状態にありますが、今後は、広大な2期島において物流拠点施設の展開が可能です。しかも、駐機中の航空機に近接したスペースに施設を設けることができるため、貨物ハンドリングの迅速化、荷傷みをなくす等の輸送品質の確保が容易です。[図表4]
 
[図表4] ◇関西空港における国際線貨物取扱施設の大増強
(拡大画面:225KB)
 
 アジア・ゲートウェイとしての航空物流拠点のための施設展開用地を、空港内部という好立地に保有し、しかも、24時間対応が可能なことから、これまでにない流通加工(検品、ラベル貼り、包装、仕分け等)、VMI(部品や製品の供給側が納入先に代わって在庫管理を行うこと)、シー・アンド・エア輸送等の総合物流サービスの提供にも対応できる環境を備えています。
 
〔4〕日本の物流拠点とアジア・北米間の中継物流拠点を兼ね備えることが可能
 関空は、関西、西日本という巨大な後背需要圏を抱え、さらに、国際線と国内線の双方が就航できるため、首都圏を始め、全国からの航空貨物も集約できる空港であり、我が国全体のための航空物流拠点機能を担うことが可能です。また、アジアと北米をつなぐ太平洋横断航路上に位置し、アジア・北米間の航空物流の中継拠点となり得る好立地にあります。
 アジア各国は、それぞれ「ハブ空港」としての中継物流拠点の構築に力を入れていますが、これに伍して、日本がアジア・ゲートウェイとなるためには、中継物流拠点として活用可能な空港を造ることが不可欠ですが、関空はそのための十分な機能を備えています。


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