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近畿の世界遺産を訪ねて
姫路城
 
 地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から引き継がれた貴重なたからもの。それらは次世代に受け継いでいくべき人類の遺産として、世界遺産条約によって「世界遺産リスト」に登録され保護されている。
 わが国には、現在13ヶ所の世界(文化・自然)遺産が登録されているが、近畿にはそのうち5ヶ所もの世界遺産が存在する。観光立国を目指すわが国にとって貴重な観光資源となる近畿各地の世界遺産。その多様な姿を、順次、読者の皆さん方にご紹介していきたい。
 まずは、法隆寺地域の仏教建造物とともに、1993年12月にわが国で始めて世界遺産に登録された姫路城を訪ねてみた。
 
 
 まだまだ夏の日差しを思わせる9月中旬、澄み切った青空の中にひときわ鮮やかに白鷺が羽ばたいている。まさに「白鷺城」とは言い得て見事。大手門を潜って姫路城を見上げるとその威容とともにその美しさに感動を覚える。
 今日は管理事務所長さんにお話を伺い、その後、シルバーガイドをお願いして城内を案内してもらうことになっているが、約束の時間までには少々早すぎた。時間調整のつもりで管理事務所横の「資料館」を覗いてみることにした。ここには、姫路城にまつわる歴史、見所など姫路城の概要を説明してくれるパネルと画面案内が設備されている。その中にいかにも場違いな草生した廃屋の写真が展示されており、かつての姫路城の一部であるとの説明書きがあった。明治初期、無用の長物と見られた各地の城は、主人を失った建物として朽ちるがまま放置され、さらにはその多くが解体の憂き目にあって消え去った。
 姫路城は、築城以来ずっとあの優美な姿のままで今日を迎えていると思っていた私にとっては少々驚きであり、当然といえば当然のことながら、姫路城もやはり歴史の荒波に翻弄される存在であったことを再認識させられた。
 姫路城の危機については後ほど少し触れることにして話を進めよう。
 約束の時間になったので管理事務所に向かい、訪問の趣旨をお伝えする。所長の大西秀策さんは、所用があって約束の時間には無理と事前にお聞きをしていたのだが、程なく帰ってこられた。
 
 早速、大西所長さんにいろいろ伺ってみた。
 
 
●姫路城には毎年どのくらいのお客様がお越しになるんですか?
 年間70万人〜90万人で推移しています。昨年は、名古屋で博覧会が開催された影響もあって、少し落ち込みましたが、今年は昨年比で2〜3万人増加していますね。
 
 
●最も大勢のお客様がお越しになるのはどの時期なんでしょう?
 やはり4月のお花見シーズン、5月のG・Wになります。昨年でいえば4月で約11万人、5月で9万人の方にお越しいただいています。年間の25%程の方がこの時期となります。あとは、観光シーズンといわれる11月の7万人と続きます。
 
●途中でもずいぶん多くの外国人観光客を見かけましたけれど?
 近年、どんどん外国からのお客様も増えてきました。これは、世界遺産に登録をされたこともありますが、なんと言っても、国土交通省で展開して頂いている「ビジットジャパンキャンペーン」(※註1)の効果が最も大きいと思います。おかげでさまで、平成16年から外国人観光客が急増しました。今年は、去年のぺースより上がっていますから、もっと期待できると思っています。
 
 
●姫路城として最も力を入れているのはどんなことですか?
 世界遺産に登録されていますが、失くなってしまえば世界遺産も何もありませんから、火災には気をつけています。毎月曜日には実際に放水して消防訓練を行っていますし、毎年12月29日には、全職員総出の消防訓練を行っています。
 
●大切なお城を預かっている管理事務所長さんとしては、年中気の休まる日がないですね?
 そうですね。しかし、今は、防災設備が充実してセキュリティーも強化されていますから歴代の所長さんから比べればずいぶん楽だと思います。そんなものがない時代は、大変やったと思います。
 
●隣の資料室でずいぶん荒れ果てた姫路城の写真を見たんですが?
 そうです。明治初期には、この姫路城も風雨にさらされて荒れるがままで、天守閣も解体されることになっていました。当時陸軍省第四局長代理であった中村重遠大佐が、この城の価値を惜しんで陸軍大臣山県有朋にかけあい、国費による修理保存へと導いてくれて、ようやく生き延びることができたわけです。
 以後、明治43年の本格的な保存工事をまじめ、保存へ向けての工事が度々行われました。
 昭和31年からは「昭和の大修理」(※註2)が8年間の歳月をかけて行われ、今日の姫路城の姿として、昭和39年6月1日から一般公開が再開されました。
 
●いろいろな人たちの努力で今日の姫路城があるんですね?
 そうです。現在も常に保全修理を行っていますし、大天守は平成21年から修理する計画です。大天守以外は平成6年から29年間の修理計画を実施しています。こうした修理作業をとおして、漆喰職人や、宮大工など特殊な職人技能の伝承にも役だっています。
 
セキュリティールームでは、係員の方が城内あらゆる個所に設置されたカメラから送られてくる映像を24時間監視し、非常時には直ちに対応できる体制が採られている。
 


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