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参考資料2. 廃棄物処理・リサイクルのしくみ
1. 廃棄物処理・リサイクルに関する法体系
 わが国では、廃棄物の排出抑制や適正な処理、リサイクルの実施に関連して、以下のような法律がつくられている。
 環境に関する基本的な考え方は「環境基本法」に定められ、廃棄物の適正処理の必要性が明示されている。「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」では、廃棄物の定義や処理責任、処理方法、処理施設に関する基準等が定められている。また、リサイクルについては、特定の対象業種・対象製品について事業者に対して3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取組を求める「資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)」の他、2000年以降相次いで施行された、自動車や家電製品などの個別製品を対象としたリサイクル法などが定められている。
 このほか、有害廃棄物の国境を越える移動を規制する「バーゼル条約」や海洋への廃棄物等の投棄を規制する「ロンドン条約」などの国際的な取り決めや、「環境影響評価法」、「大気汚染防止法」なども廃棄物処理やリサイクルに関するものである。
 
図2-1 廃棄物処理・リサイクルに係る法制度
資料)環境省ホームページより三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
 
 このような法体系のもとで、廃棄物処理やリサイクルが推進されている。次項ではこれらのしくみについて整理する。
 
2. 廃棄物処理のしくみ
 廃棄物処理法において、廃棄物とは「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)」と定義されている。
 廃棄物は、大きく産業廃棄物と一般廃棄物の2つに区別される。また、これらの廃棄物のなかで、爆発性、毒性、感染性、その他人の健康や生活環境に被害を生じるおそれがあるものを「特別管理一般廃棄物」「特別管理産業廃棄物」と分類し、収集から処分まで全ての過程において厳重に管理することとされている。
 ここでは、一般廃棄物および産業廃棄物の処理のしくみについて整理する。
 
(1)一般廃棄物
(1)対象
 一般廃棄物は、産業廃棄物以外の廃棄物を指し、主に家庭から発生する家庭ごみとオフィスや飲食店から発生する事業系ごみと、し尿に分類される。
 
(2)処理のしくみ
 一般廃棄物は分別回収が行われ、その種類は市町村によって異なるが、概ね直接埋め立てられるもの(不燃ゴミ)、焼却されるもの(可燃ゴミ)、焼却以外の方法で中間処理されるもの(資源物、粗大ゴミなど)に大別される。収集された廃棄物は、焼却施設、粗大ゴミなどを破砕する施設、堆肥化などを行う施設などでの中間処理を経て、資源化もしくは最終処分が行われる。
 
図2-2 一般廃棄物処理の流れ
資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
 
(3)処理の役割分担
 一般廃棄物の処理に関する責任は市町村にあり、市町村は一般廃棄物の発生量や処理量見込み、排出抑制方策、分別収集の区分などを定めた一般廃棄物処理計画を策定し、それに則って一般廃棄物の収集・運搬・処理を行わなければならない。
 市町村による収集・運搬、処理が困難であり、市町村が作成した一般廃棄物処理計画に適合する場合などに限り、専門の処理業者によって処理されることもある。一般廃棄物の収集・運搬、処分を業として行う者は、業を行おうとする区域を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。ただし、事業者が専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみを収集・運搬または処分を業として行う場合は対象外となる。
 また、一般廃棄物処理施設の設置にあたっては、都道府県知事の許可を受けなければならない。
 
(2)産業廃棄物
(1)対象
 産業廃棄物は、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、法律で定められた以下の20種類のものが対象となる。
 
【産業廃棄物とは】
 燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残さ、ゴムくず、金属くず、ガラスくずおよび陶磁器くず、鉱さい、がれき類、動物のふん尿、動物の死体、ばいじん、動物系固形不要物、その他
 
(2)処理のしくみ
 産業廃棄物は、事業者によって事業場内で保管された後、廃棄物処理法で定める基準等に則って、産業廃棄物処理業の免許を取得している事業者によって、収集運搬、中間処理(脱水・乾燥・焼却・破砕・油水分離・中和・熔融・コンクリート固型化等)、最終処分(埋立処分)という流れで処理が行わなければならない。
 また、処理に際しては、産業廃棄物の減量化を図るため、できる限り有価物は再利用に努めることが求められている。
 
図2-3 産業廃棄物処理の流れ
資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
 
(3)処理の役割分担
 廃棄物を排出する事業者は、その事業活動によって生じた産業廃棄物を自らの責任において処理しなければならない。また、自ら処理ができない場合は、専門の処理業者に委託することができる。
 他者に処理を委託する場合は、都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物収集運搬事業者および産業廃棄物処理事業者に委託し、産業廃棄物管理票制度(マニフェスト制度)に則って、排出から最終処分が終了するまでの一連の処理が適正に行われたことを都道府県知事に報告しなければならない。
 また、産業廃棄物処理施設の設置にあたっては、都道府県知事(政令市は市長)の許可を受けなければならない。
 
a)産業廃棄物処理事業者
 産業廃棄物の収集・運搬、処分(中間処理、最終処分(埋立又は海洋投入))を業として行う者は、業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事(政令市は市長)の許可(有効期限5年)を受けなければならない。処理事業者区分は以下のとおりである。
 特に、産業廃棄物収集運搬業については,産業廃棄物の積卸しが発生する発地と着地双方の都道府県知事(政令市は市長)の許可が必要となる。
 
表2-1 産業廃棄物処理業の許可の種類
収集運搬業 産業廃棄物 積み替え・保管を含まない
積み替え・保管を含む
特別管理産業廃棄物* 積み替え・保管を含まない
積み替え・保管を含む
処分業 産業廃棄物 中間処理業(破砕、焼却など)
最終処分業(埋立処分など)
特別管理産業廃棄物* 中間処理業(破砕、中和など)
最終処分業(埋立処分など)
*)特別管理産業廃棄物:産業廃棄物のうち爆発性、毒性、感染性その他人の健康又は生活環境に係る被害を生ずる恐れがある性状を有するもの
参考)尼崎市資料をもとに三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
 
 1997年の廃棄物処理法の改正に基づき、一定の廃棄物の再生利用について、その内容が生活環境の保全上支障がない等の一定の基準に適合していることを環境大臣が認定し、認定を受けた者については業及び施設設置の許可は不要となった。これまでに自動車用廃タイヤのセメントの原材料利用、シールド工法に伴う建設汚泥の高規格堤防の築造材としての利用、廃プラスチック類の高炉還元剤としての利用、廃プラスチック類のコークス及び炭化水素油としての利用及び廃肉骨粉のセメントの原材料利用がこの再生利用認定制度の対象となっている。
 
b)産業廃棄物管理票制度(マニフェスト制度)の概要
 1998年12月より、産業廃棄物管理票制度(マニフェスト制度)がすべての産業廃棄物に導入された。産業廃棄物処理を他者に委託する排出事業者(中間処理業者が排出事業者となる場合も含む)は管理票を交付し、委託を受けた事業者が所定事項を管理票に記入し、終了報告する。管理票はマニフェストと呼ばれ、電子マニフェストと紙マニフェストがある。
 処理スケジュールは下図のようになっており、中間処理の終了報告(中間処理を経由せず直接最終処分される場合も含む)は90日以内、中間処理を経由して最終処分される場合は180日以内に最終処分の終了報告をマニフェストを使用して確認しなければならない。
 排出事業者は、上記の期限を過ぎてもマニフェストにより報告を受けない場合、その処理状況を確認し、適切な措置を講じ、都道府県知事等に報告する。
 
図2-4 マニフェスト制度の概要
資料)(財)日本産業廃棄物処理振興センター


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